我鳴がな)” の例文
酒場の主人らしいのや東部イースト・エンドのごろつき然たるのが、汗と泡を飛ばしながら、白墨と財布を両手に握って、台の上から我鳴がなり立てる。
そのあとはみんな勝手に、てん/″\ばら/\に好きなことを我鳴がなり散らして、誰も他人の云うことなんぞに耳を傾ける者はなかった。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
と下にむらがっている男の中でも、図抜けて背の高い柿色の道服に革鞘の山刀を横たえた髯むじゃらな浪人が、一人の乾分こぶん我鳴がなりつけた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
法律で禁止しようが、社会課で宣伝しようが、救世軍が我鳴がなり立てようがビクともしませぬ。天の岩戸の昔よりという意気組であります。
鼻の表現 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
まごついた男は指を組み合わせる。田舎者の表情、絶間なく我鳴がなり立てる老婆——それ等は実に完全に表現され、皆を笑わせた。
我鳴がならしつけが、おめかけあはてもせず、たまかんざしくと、ふなばたから水中すゐちう投込なげこんで、さつかみさばいたとおもへ。……どう突伏つゝぷしてうごかぬだ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「なんだ、なんだ……なにをおたずね申してえんだ。……いま手がふさがっているから、そこで大きな声で我鳴がなりねえ」
顎十郎捕物帳:07 紙凧 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
そこに浮いている二羽の鴛鴦おしどり、そこに我鳴がなっている二羽の鵞鳥がちょう、水禽小屋にいるものといえば、ざっとどころか文字通り、四羽の水禽に過ぎなかった。
奥さんの家出 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「それは、次第に依っては、出て見んこともないが、一体いま玄関で我鳴がなり立ておったのは、どこの何やつじゃ?」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
と七蔵じじいきりきって門口から我鳴がなれば、十兵衛聞くより身を起して、なにあの、上人様のお召しなさるとか、七蔵殿それは真実まことでござりまするか、ああなさけない
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
貴樣きさまずばどちみちおなことをしくもない九しやくけんれが小僧こぞうれてやう、さうならば十ぶん我鳴がなたて都合つがうもよからう、さあ貴樣きさまくか、れがようかとはげしくはれて
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
やい、しょうちのならねえ餓鬼共、と許生員は我鳴がなり立ててもみたが、連中はおおかた散り失せたあとで、数少くとり残されたのが権幕に気圧けおされあたりから遠のいているだけだった。
蕎麦の花の頃 (新字新仮名) / 李孝石(著)
八五郎が遠慮もなく我鳴がなり立てると、平次は店の方から飛んで來ました。
我鳴がなり散らすので、将軍は苦虫を噛み潰したやうな顔をする。
長者の我鳴がなしわがれ声は、階下したから階上にかいから塀外まで、恐ろしい権幕で鳴り渡った。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
馬鹿野郎アンベシイル!」と我鳴がなった。「どこへ行くかウ・ヴ・ザレ