愛敬あいきやう)” の例文
森鴎外が、『遺言には随分面白いのがあるもので、現に子規の自筆の墓誌など愛敬あいきやうが有つて好い。樗牛の清見潟は崇高だらうが、我々なんぞとは、趣味が違ふ』
結核症 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
持ち出で傳吉が前に差し置きさぞやお空腹ひもじう候はん私し一人にて煮炊にたき致し候ゆゑいそぐとすれども時移ときうつりお待ち兼て在りしならん緩々ゆる/\あがりておやすみなされませと言ふものごしに愛敬あいきやう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
けふ此頃このごろとりまちまゐりて、エンギを申候まうじそろものにこの意義いぎありや、この愛敬あいきやうありや。
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
さりとは愛敬あいきやうひとあきれしことありしが、たびかさなりてのすゑにはおのづか故意わざと意地惡いぢわるのやうにおもはれて、ひとにはもなきにれにばかりらき處爲しうちをみせ、ものへばろく返事へんじしたことなく
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
わたしなども、大姐御と書かれることもあるが、愛敬あいきやうなのはわかつてゐる。
凡愚姐御考 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
あざむくと藤重は吾助に思はれ物をも多くもらひ花見遊山ゆさんなどにつれらるゝを甚だ心よくは思はねども商賣柄しやうばいがらなれば愛敬あいきやうを失ひては成ずと表面うはべにはうれしきていをなして同道せしが其折々無理むりなるこひ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
送りけるが娘お幸は今年ことし十七歳となり尋常なみ/\の者さへ山茶も出端でばなの年頃なるにまして生質うまれつき色白いろしろにして眼鼻めはなだちよく愛敬あいきやうある女子をなごなれば兩親りやうしんは手のうちたまの如くにいつくしみ手跡しゆせき縫針ぬひばりは勿論淨瑠璃三味線も心安き方へ頼みならはせ樂みくらして居ける處に一日あるひ長八は淺草觀音へ參詣なし夫より上野の大師へ參らんと車坂くるまざか
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)