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愛兒
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あいじ
と
言葉やさしく
愛兒の
房々せる
頭髮に
玉のやうなる
頬をすり
寄せて、
餘念もなく
物語る、これが
夫人の
爲めには、
唯一の
慰であらう。
彼は
煙管を
手にすることが
慾念を
忘れ
得る
方法でないことを
知つて、
彼は
丁度他人に
對する
或憤懣の
情から
當てつけに
自分の
愛兒を
夥かに
打ち
据ゑる
者のやうに
羅宇を
踏み
潰した。
今此新造巡洋艦に
君の
愛兒日出雄少年の
名と
何かの
因縁ある
如く「
日の
出」と
命名されて
居るのは
何か
深い
仔細のあるではありませんか。
濱島は
船の
舷梯まで
到つた
時、
今一
度此方を
振返つて、
夫人とその
愛兒との
顏を
打眺めたが、
何か
心にかゝる
事のあるが
如く
私に
瞳を
轉じて