性来せいらい)” の例文
旧字:性來
背が馬鹿に高くて腕力があるうえに、父の庄八が、ちょっと睨みのきく親分株の男だったので、性来せいらい気の小さいわりに、横暴な振舞ふるまいが多かった。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
やがては墨染すみぞめにかへぬべきそでの色、発心ほつしんは腹からか、坊は親ゆづりの勉強ものあり、性来せいらいをとなしきを友達いぶせく思ひて、さまざまの悪戯いたづらをしかけ
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
左近将監はそのころ四十五、六、かくばったその名のしめすとおり、性来せいらい武ばったことのすきなたちで、じぶんでも間庭無念流の太刀をよくつかわれます。
亡霊怪猫屋敷 (新字新仮名) / 橘外男(著)
さてこの天狗てんぐもうすものの性来せいらい——これはどこまでってもわたくしどもにはひとつのおおきななぞで、しらべればしらべるほどちなくなるようなところがございます。
だから海上に漂流ひょうりゅうしているあいだは、なにごとも富士男の意見にしたがってきたが、いま陸地を見ると、そろそろ性来せいらいのわがままが頭をもたげてきたのである。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
彼女はただ——女ごころに——殊にそういうれがましい事は好きだし、又性来せいらいが勝気だし——一面には又、浪人して出て来た故郷元くにもとに対しても、ここで良人が
死んだ千鳥 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
否だろうけれども性来せいらい怜悧りこうの生れ付ゆえ、否だと云ったらば奉公も出来難できにくい、辛く当られるだろうと云うので、ま手前も否々いや/\ながら己の云うことを聞いてくれた処は
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
浮世絵師うきよえしが夢に見そうないい女で、二十しっぱちあぶらの乗り切った女ざかり、とにかく、すごいような美人なのが、性来せいらい侠気きょうきわざわいして、いつの間にかこうして女遊人に身を持ち崩し
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
五「今日こんにちかみの御名代として罷出まかりでましたが、性来せいらい愚昧ぐまいでございまして、申上げる事もついにお気に障り、お腹立に相成ったるかは存じませんが、ひとえに御容赦の程を願います」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
怖ろしい片輪のうえに性来せいらい手裏剣に妙を得て、香具師やしに買われて唐人劉と称し、諸国をうちまわっているうち、きょうの祭りを当てこみにこの長者ヶ丸に小屋を張って銭をあつめているところへ
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
つい先月お前の二の腕に刺青ほりものをしてお父様とっさまに代って私が意見をしたのを忘れておしまいか、お前は性来せいらいで人と喧嘩をするが、短慮功を為さずと云うお父様の御遺言ごゆいごんを忘れたか、母のいましめも忘れて
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
見渡みわたすに現今いまの世界は交際流行かうさいばやりで、うもこの世辞せじらぬ事だとふけれど、これも言葉の愛でうしても無ければならぬものだ、世辞せじうと性来せいらいの者は、何様どんなに不自由を感じてるかも知れぬから
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)