心遣こゝろづか)” の例文
この図書係といふ役は、手当が余計に貰へる関係から野田がひとりぎめに添へて置いたものだつた。果して和作はその野田の心遣こゝろづかひを心から喜んだ。
朧夜 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
すくないのか、とやかくと、心遣こゝろづかひにむねさわがせ、さむさにほねひやしたれば、わすれて持病ぢびやうがこゝで、生憎あいにく此時このとき
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
所持しよぢ致し居り候へば何時いつの道中にても登りくだりが心遣こゝろづかひでなりません道中は金子の十兩から持つて居るとわるものが目を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
女「う致しまして、そんなお心遣こゝろづかいには及びません、左様なら旦那様、追ってまたわたくしからお礼をいたします」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
私及び主人に對する、彼女の謝恩の心遣こゝろづかひによつて、彼女は以來長い間に嘗て私が私の力の及ぶ限り彼女に與へたどんな小さな親切をも立派に返したのである。
ほんにおまへ心遣こゝろづかひがおもはれるとうれしきなかにもおもふまゝの通路つうろかなはねば、愚痴ぐちの一トつかみいやしき身分みぶんなさけなげにはれて、本當ほんたうわたし親不孝おやふかうだとおもひまする
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
此通このとほり獻立こんだて二人前ににんまへ明日みやうにち晝食ちうじきこしらふるやう、料理番れうりばん申置まをしおくべし、なにかと心遣こゝろづかひいたさせたり、休息きうそくせよ
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
見ていたましく思ひ或日我がねむり居る時此座敷へ來りお花に對ひ縱令たとへたくはへの路金は盡たり共然樣な事に少しも心遣こゝろづかひなく病氣全快ぜんくわいある迄看病かんびやうしてゆるりと滯留たいりう致すべしと情ある言葉を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
だが、ジエィンの小さい指に握られてゐると思へば嬉しい。私は召使共のうるさい世話よりもまつたくの孤獨がいゝと思つてゐた。しかし、ジエィンのやさしい心遣こゝろづかひは絶えざる喜びだ。
彼等の素朴そぼくな心盡しを受け、また、それに心を籠めて報いることが——彼等の心持を細かく察して——私には一つの樂しみであつたが、恐らくさうした心遣こゝろづかひには、彼等は常に慣れてはゐなかつたし
對面せぬも無禮なりあひ申べし大隅心遣こゝろづかひ無用なり假令何事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)