御覧ごらう)” の例文
旧字:御覽
葦屋あしやの里、雀の松原、布引ぬのびきの滝など御覧ごらうじやらるるも、ふるき御幸ごかうどもおぼし出でらる。生田いくたの森をも、とはで過ぎさせ給ひぬめり。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ゐのしゝきばこさへました、ほんにさいでござります、御覧ごらうじまし。』と莞爾々々にこ/\しながら、てのひららしてせたところを、二人ふたり一個ひとつづゝつた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「泊めて呉れるかな」「頼んで御覧ごらうじ、どれわしも一緒に帰つて行かずか、其処まで一緒に行つて上げずよ」
伊良湖の旅 (新字旧仮名) / 吉江喬松(著)
もし、此時、利仁が、突然、向うの家の軒を指して、「あれを御覧ごらうじろ」と云はなかつたなら、有仁はなほ、五位に、芋粥をすすめて、止まなかつたかも知れない。
芋粥 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
船「御覧ごらうじまし。昼間だと橋の上の足音でドン/\そう/″\しうごぜへますが、夜はアレ水の流れる音がすごく聞へますぜ。ドレ/\思ひきつて大間おほまを抜けやう。」
町中の月 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
それは水害すゐがいのためにもしふね転覆ひつくりかへると蘇生よみがへ亡者やつが多いので、それでは折角せつかくひらけようといふ地獄ぢごく衰微すゐびだといふので、とほ鉄橋てつけうになつちまいました、それ御覧ごらうじろ
明治の地獄 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
されども、われ些しも驚きたる頗色けしきをあらはさず。莞爾として笑み返しつ。如何にも驚き入つたる御眼力。多分お上より触れまはされし人相書を御覧ごらうじたるものなるべし。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
たとへばあのフォマ・グリゴーリエヸッチを御覧ごらうじろ、どれだけ有名な人といふでもないけれど、あの人をよく見ると、顔に何処となく、どつしりした威厳が具はつてをる——あの人が
「一国の政事まつりごとを執らせられる方が、そんな気短きみじかな事を仰有るもんぢやござりません。兎角気長に構へさせられてな。今に御覧ごらうじませ、この種から立派な柿の実をらせて御覧に入れます。」
御覧ごらうぢやい、まづ。』とだみごゑ
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
人間にんげんをかうやつといたら、ゑもこゞゑもしやうけれど、けだものでござりますからいまなが御覧ごらうじまし、此奴こいつはもうけつしてひもじいふことはござりませぬから
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ちくぜんの守を御覧ごらうじ候はば、何やうにも、御ちそう申し、ものまゐりをも致させ候やうにいたし候べく、たべ物などもきこし召し、身をがんじように、なされ給ふべく候
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御先途見とどけの役は霜とわたくしとに定まり居り候へば、この頃にはみなみないづこへか落ち失せ、わたくしどもばかり残り居り候。秀林院様は少斎を御覧ごらうぜられ、介錯大儀と仰せられ候。
糸女覚え書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「だつて考へて御覧ごらうじませ。」と農夫ひやくしやう節高ふしだかを頑丈な手をタフト氏の鼻先きで振りまはした。「今の農夫ひやくしやう往時むかしと違つて、自分達の畑からあがる物の植物学とやらの名前を知らなくつちやなりますめえ。 ...
「あれを御覧ごらうじろ。男どもが、迎ひに参つたげでござる。」
芋粥 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
帝もことのていたらくを始終残らず御覧ごらうぜられ
きりしとほろ上人伝 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)