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当時
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いま
当時の殿様の
曾祖父様の時代の
噺で、その奥様が
二歳になる若様を残して
御死亡になりました、ソコで間もなく
他から
後妻をお貰いになって
これは
私の
大事な
品でございまして、
当時斯う
零落れまして、
値を高く
買はうといふ人がございますけれども、なか/\
手離しませぬで……。
それを埋めやうとて
雷神虎が
盆筵の
端についたが身の詰り、次第に悪るい事が
染みて
終ひには土蔵やぶりまでしたさうな、
当時男は監獄入りしてもつそう
飯たべていやうけれど
「我身も田園等を
持たる時もありき。
亦財宝を領せし時もありき。
彼の時の
身心とこのころ貧うして
衣盂にともしき時とを比するに、
当時の心すぐれたりと覚ゆる、これ
現証なり」(同上第三)。
何を
云つて
居る、
当時は
事由あつて
零落れてお
出でなさるが、
以前は
立派なお
方で、
士族さんだか
何だか
知れないんだよ、
大事にしてお
上げ、
陰徳になるから。
で、その後も
兎かくに
其の窓から
墜ちる人があるので、
当時の殿様も
酷くそれを気にかけて、
近々の
中にアノ窓を
取毀して
建直すとか云ってお
在なさるそうですよ
当時罰が
中つて
斯ういふ
身分に
零落れ、
俄盲目になりました、
可愛想なのは
此子供でございます、
何んにも
存じませぬで、
親の
因果が子に
𢌞りまして、
此雪の
降る
中を
跣足で歩きまして