“当時(いま)” の例文
旧字:當時
当時(いま)の殿様の曾祖父様(ひいおじいさま)の時代の噺(はなし)で、その奥様が二歳(ふたつ)になる若様を残して御死亡(おなくなり)になりました、ソコで間もなく他(た)から後妻(にどぞい)をお貰いになって
画工と幽霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
これは私(わたくし)の大事(だいじ)な品(しな)でございまして、当時(いま)斯(か)う零落(おちぶ)れまして、値(ね)を高く買(か)はうといふ人がございますけれども、なか/\手離(てばな)しませぬで……。
それを埋めやうとて雷神虎(らいじんとら)が盆筵(ぼんござ)の端(はし)についたが身の詰り、次第に悪るい事が染(し)みて終(しま)ひには土蔵やぶりまでしたさうな、当時(いま)男は監獄入りしてもつそう飯(めし)たべていやうけれど
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「我身も田園等を持(もち)たる時もありき。亦(また)財宝を領せし時もありき。彼(か)の時の身心(しんじん)とこのころ貧うして衣盂(えう)にともしき時とを比するに、当時(いま)の心すぐれたりと覚ゆる、これ現証(げんしょう)なり」(同上第三)。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
何(なに)を云(い)つて居(ゐ)る、当時(いま)は事由(ゆゑ)あつて零落(おちぶ)れてお出(い)でなさるが、以前(もと)は立派(りつぱ)なお方(かた)で、士族(しぞく)さんだか何(なん)だか知(し)れないんだよ、大事(だいじ)にしてお上(あ)げ、陰徳(いんとく)になるから。
で、その後も兎(と)かくに其(そ)の窓から墜(お)ちる人があるので、当時(いま)の殿様も酷(ひど)くそれを気にかけて、近々(ちかぢか)の中(うち)にアノ窓を取毀(とりこわ)して建直(たてなお)すとか云ってお在(いで)なさるそうですよ
画工と幽霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
当時(いま)罰(ばち)が中(あた)つて斯(か)ういふ身分(みぶん)に零落(おちぶ)れ、俄盲目(にはかめくら)になりました、可愛想(かあいさう)なのは此子供(このこぞう)でございます、何(な)んにも存(ぞん)じませぬで、親(おや)の因果(いんぐわ)が子に𢌞(めぐ)りまして、此雪(このゆき)の降(ふ)る中(なか)を跣足(はだし)で歩きまして