小荷駄こにだ)” の例文
馬士まごもどるのか小荷駄こにだが通るか、今朝一人の百姓に別れてから時の経ったはわずかじゃが、三年も五年も同一おんなじものをいう人間とは中をへだてた。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
江戸の町にいふ店下たなしたを越後に雁木がんぎ(又はひさし)といふ、雁木の下広くして小荷駄こにだをもひくべきほどなり、これは雪中にこのひさし下を往来ゆきゝためなり。
かれは、図太く多寡たかをくくって、折から混んできた、野菜車や旅人や小荷駄こにだの群れの往来にまじって、ゆっくりと通りぬけた。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三百石の家にては侍二人、具足持ぐそくもち一人、鑓持やりもち一人、挾箱はさみばこもち一人、馬取二人、草履ぞうりとり一人、小荷駄こにだ二人の軍役を寛永十年二月十六日の御定めなり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
それにわしゃア馬が誠にきれえだ、たまには随分小荷駄こにだのっかって、草臥くたびれ休めに一里や二里乗る事もあるが、それでせえ嫌えだ、矢張やっぱり自分で歩く方がいだ
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
れちがって竜之助の方で、それと気のつかなかったのは無理もないが、七兵衛の方で竜之助に気のつかなかったのは、竜之助が小荷駄こにだの馬の蔭に見えがくれであったのと
その堅い結び付きは、実際の戦闘力を有するものから、兵糧方ひょうろうかた賄方まかないかた雑兵ぞうひょう歩人ぶにん等を入れると、千人以上の人を動かした。軍馬百五十頭、それにたくさんな小荷駄こにだを従えた。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その後から行くものは、男の木地師、女の木地師、老人、子供、それから家畜——馬や犬やにわとりや! それから荷車、それから小荷駄こにだ、総勢すべて五百人、二列縦隊、トットと走る。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
水車場すいしゃばがよいの小荷駄こにだうま
まざあ・ぐうす (新字新仮名) / 作者不詳(著)
馬士まごもどるのか小荷駄こにだとほるか、今朝けさ一人ひとり百姓ひやくしやうわかれてからときつたはわづかぢやが、三ねんも五ねん同一おんなじものをいふ人間にんげんとはなかへだてた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
江戸の町にいふ店下たなしたを越後に雁木がんぎ(又はひさし)といふ、雁木の下広くして小荷駄こにだをもひくべきほどなり、これは雪中にこのひさし下を往来ゆきゝためなり。
光秀は、小荷駄こにだの者が、簡単に張りめぐらした幕の陰に床几しょうぎをすえて、いま食事もすまし、祐筆ゆうひつの者に、何か一通の手紙を口述して書かせていたが
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
藤吉郎秀吉ひでよしは、北近江きたおうみ小谷おだにの城から一小隊の部下と、小荷駄こにだすこしをひきいて、きょう岐阜に着いた。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
小荷駄こにだ後備うしろぞなえはもっともしんがりに、いましも、三軍ほしをいただき、法師野ほうしのさしていそいできた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
実は、こんどの御合戦に、わしも小荷駄こにだの軍夫に召募めされて行くことになりましたから、その手形を失っては、組がしらに云い開きが立たねえが、なあに、間違ったら、この首を
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのほかの多くの家来は、まだ濠の外にとどまって、馬を洗い、小荷駄こにだをととのえ、これからの宿営や配備に混雑しているとみえる。馬のいななきや喧騒けんそうする人声が遠くに聞えていた。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
小荷駄こにだに千両余りの金箱を積んで、おくら役人ふたりと、池田家の御老臣と、かくいう俺と四人して、その黄金をみんな犬山城の城下の奴らへ、バラきに行ったんだから、豪勢なものだろう。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
小荷駄こにだのことなど、何くれとなく、先輩として事細かに教え合った。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
小荷駄こにだの鈴が街道の朝を知らせ、小禽ことりが愉快にさえずりだした。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)