小羊こひつじ)” の例文
私の義務として恐らくは神の小羊こひつじ一匹ひとつであつたかも知れぬこの娘が、實は一人の墮落もの——眞の羊の群に屬する者ではなく、明らかに僞者にせものであり
小羊こひつじのような、しろくもが、んでいくのを見送みおくりながら、三にんは、おもおもいに、おじさんのはなしいていました。
こま (新字新仮名) / 小川未明(著)
イエス彼に云ひけるは、「ユダよ。我誠になんぢを知る。爾は荒野あらの獅子ししよりも強し。ただ小羊こひつじの心を忘るるなかれ。」ユダ、イエスの言葉を悦べり。されどその意味をさとらざりき。
LOS CAPRICHOS (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
牧羊者ひつじかいが羊のむれみちびいて川を渡るに、先ず小羊こひつじいて渡ると親羊おやひつじいて渡ると云う例をひいて、次郎少年の死は神が其父母生存者せいぞんしゃみちびかん為の死である、と牧師は云うた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
美しい殿堂、毛皮の幕屋ばくや、祭壇で小羊こひつじがたかれています……広い沙漠さばく、日が沈みました。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
と「小羊こひつじ漫言」に『早稲田文学』の総帥坪内逍遥は書いたが、おとめ問題での美妙の反駁文には手厳しかった。「小説家は実験を名として不義を行うの権利ありや」という表題で仮借かしゃくなくやった。
田沢稲船 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
日出雄少年ひでをせうねん特更ことさら子供心こどもごゝろ愉快ゆくわい愉快ゆくわいたまらない、丁度ちやうど牧塲まきばあそ小羊こひつじのやうに其處此處そここゝとなくんであるいて、折々をり/\わたくしそばはしつてては甲板かんぱんうへ裝置さうちされた樣々さま/″\船具せんぐについて疑問ぎもんおこ
くちぶえに小羊こひつじよびて鞭ふりて牧場まきばに成りし歌のふしとる
恋衣 (新字旧仮名) / 山川登美子増田雅子与謝野晶子(著)
春雨にゆふべのみやをまよひ出でし小羊こひつじきみをのろはしの我れ
みだれ髪 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
らちにむれゐる小羊こひつじ
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
そのまちにはそこを照らす太陽も月も、神の榮光が輝くが故に、また小羊こひつじはその光であるが故に要らないのであつた。
若し私が小羊こひつじを——私のいとしい小羊を——狼の穴のすぐ傍にまもりもなしに置いておいたら、私は輕率な羊飼だつたに違ひない。で、あなたは安全でしたね。