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みち
彼は
先づ
現在の
自分が
許す
限りの
勇氣を
提さげて、
公案に
向はうと
決心した。それが
何れの
所に
彼を
導びいて、どんな
結果を
彼の
心に
持ち
來すかは、
彼自身と
雖も
全く
知らなかつた。
それから
間もなく、
森閑と
鎮まり
返った
私の
修行場の
庭に、
何やら
人の
訪れる
気配がしましたので、
不図振り
向いて
見ると、それは
一人の
指導役の
老人に
導かれた、
私のなつかしい
母親なのでした。
下女が
出て
來て、
此方へと
云ふから、
何時もの
座敷へ
案内するかと
思ふと、
其所を
通り
越して、
茶の
間へ
導びいていつた。すると
茶の
間の
襖が二
尺ばかり
開いてゐて、
中から
三四人の
笑ひ
聲が
聞えた。