射手いて)” の例文
『砲術調練中の過失じゃ。鳥打峠の岩鼻をまとに狙撃しておっただまが、射手いての未熟のため、こんな所へ落下した。——許されよ。御浪士』
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
車上の射手いては、すわとばかり狙いを定めた。銃口の向う所は、アア……アパートの二階の明智の部屋だ。そこの窓に映った名探偵の黒い影だ。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
朝廷や京都の大きな御社おやしろにも、中世以前からこれとよく似た賭弓のりゆみ御式おしきがあって射手いては右左に分れて勝負を競うほかに、おのおの一方の声援者があり
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
頼長のそばには藤内太郎、藤内次郎という屈竟くっきょう射手いてが付き添うていて、手にあまると見たらばすぐに射倒そうと、弓に矢をつがえて待ち構えていた。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
山藤のつるの高手小手、大木の幹につながれて、十人の射手いての矢先にかかりなぶり殺しにされる時の、その苦しさに比べたら、軽い軽い苦しみでござんす。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それを始めとして、またたくに二三人、あるいは顔を破り、あるいはひじを傷つけて、あわただしく後ろを見せた。射手いてかずは、もちろん何人だかわからない。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
十六人の射手いてが今そこから馬場の中へ乗り込む光景は、綾錦あやにしきに花を散らしたような美しさであります。その十六人は、いずれもみやびたるよろい直垂ひたたれを着ていました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ロミオ てもきつ射手いてぢゃの! そしてそのおんなれがにも美人びじん
はるかにめぐりぬ 射手いてや蠍
文語詩稿 一百篇 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
強い馬と、精猛な兵とを、五百余騎そろえて射手いてをその中にまじえ、敵の囲みを破ったら、まず峴山けんざんへ上るがよい。必ず敵は追撃して来よう。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
射手いては順によって馬を進ませ、八幡社の方に一礼する。再び元へ戻ってくつわを並べる。西の方で白扇を飜して合図があると、東の方で紅の扇をかざしてこれにこたえる。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
四国や九州で百手祭ももてまつり、または御的射おまといの神事といっているのは、的も大きく距離も近くしてあるようだが、射手いてはたいていの場合には少年であって、みな前々から精進しょうじんをして練習する。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「おお源兵衛か今日はご苦労」駿河守は頷いたが、「すぐに射手いてに取りかかるよう」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
射手いては名人、矢はたかの石打ち、ヒューッと風をふくんで飛んだかと思うと、ねらいはあやまたずかれの胸板むないたへ——
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ふだんに寒冷かんれい気流きりゅうがあって、よほどな射手いてが、よほどなをおくらぬかぎり、その気流のさからいをうけずにまとへあたるということはありえないだろう。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、射手いてをそろえて、河中の兵へ、をあびせかけた。そのために、作業は一しお困難を極め、最初にはいった工兵の半数はもう死体となって流されていた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とたんに、射手いて山県蔦之助やまがたつたのすけは、つるをはなした右手めてをそのまま、サッと顔色かおいろをかえてしまった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「すべての陣門を敵へ開け。射手いてはみなごうの中に身を伏せろ。旗はひそめ、鼓はめよ。そして、林のように、せきとして、たとい敵が眼に映るところまで来てもかならず動くな」
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
孫堅は、充分に備え立て、各船のみよしに楯と射手いてをならべ、弩弓どきゅうつるを満々とかけて
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
通し矢の射手いてに立って、名乗りをあげるからには、各〻自信たっぷりだが、おれ達の仲間では、まず今度の名誉は、平田賛五郎に取られるだろうと定評しているのに、その貴公が、金の為に
死んだ千鳥 (新字新仮名) / 吉川英治(著)