孤立こりつ)” の例文
「此處で休みませう。」一群の兵士のやうな岩の中の一つ孤立こりつしてゐる岩の側まで來た時に、セント・ジョンが云つた。
おそらく村や町の生活から孤立こりつすることになるだろう。どうかすると、非国民のレッテルをはられることになるかもしれない。少なくとも公然と何かの役割を
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
おとなし組の三人は小ツルの言い分にさんせいできないことを、気弱きよわな無言であらわすばかりで、松江を孤立こりつさせようとした小ツルのたくらみはくずれてしまった。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
生來せいらいつたことのないかれはおしな一人ひとり手頼てたのみであつた。おしななれてかれまつた孤立こりつした。さうして老後らうご到底たうてい勘次かんじたくさねばならぬことにつてしまつたのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
だが、その張飛の手勢も、現地まで行かないうちに、またも敵に包囲されたと聞えてきたし、関羽のほうとは、それきり連絡も絶えて、玄徳の本軍は、ようやく孤立こりつの相を呈してきた。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この屏風形べうぶがたいわは、遠方えんぽうからると、たゞ一枚いちまい孤立こりつしてるやうだが、いまそのうへのぼつてると、三方さんぽう四方しほうおなかたちいわがいくつもかさなつて、丁度ちやうど羅馬ローマ古代こだい大殿堂テンプル屋根やねのやうなかたちをなし
なにによらず体育の遊戯いうぎにかけては、長吉ちやうきちはどうしてもの生徒一同に伴つてく事が出来できないので、自然と軽侮けいぶの声の中に孤立こりつする。の結果は、つひに一同から意地悪いぢわるくいぢめられる事になりやすい。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
自然は真空をみ愛は孤立こりつきらう。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
はやくも見こんでいるとおり、後年太閤たいこう阿弥陀峰頭あみだほうとうの土としてのち、孤立こりつ大坂城おおさかじょうをひとりで背負せおって、関東かんとう老獪将軍ろうかいしょうぐん大御所おおごしょきもをしばしばやした、稀世きせい大軍師だいぐんし真田幸村さなだゆきむらとは
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)