婢女はしため)” の例文
すると満願の夜霊夢のお告げがあって、早速江戸におもむき竹女と申す婢女はしためを捜せ、それこそはわが生身の形容に間違いもないとの仰せじゃ
そのお腹さまがあまりご身分でない婢女はしためでござりましたゆえ、ただおひとりの跡取りでありながらとかくうとんぜられがちなところへ
で、そのまま婢女はしためを連れて、しおしおと家へ帰ったのであったが、悲しさと口惜しさと怒りとで、眠ることなど出来そうもない。
血ぬられた懐刀 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
彼の機嫌をそこねはせぬかと惴々焉ずいずいえんとしておそれるものの如くである。彼には妻がある。彼の食事の支度に忙しい婢女はしためも大勢いる。
南島譚:01 幸福 (新字新仮名) / 中島敦(著)
一人ひとり婢女はしためも去りて、すこしのたくはへもむなしく、其の年も暮れぬ。年あらたまりぬれどもなほをさまらず。
君は今もわが聲を輕しめ給はず、君が幼兒のいづれもの聲、または、君が婢女はしためマリヤの聲
頌歌 (旧字旧仮名) / ポール・クローデル(著)
婢女はしためども気味わるがりてささやき合ひしが、門の扉のあけくれに用心するまでもなく、垣にだれし柿の実ひとつ、事もなくして一月あまりも過ぎぬるに、何時いつとなく忘れて噂も出ずなりしが
琴の音 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
一人の婢女はしためを連れてクララは家を出た。コルソの通りには織るように人が群れていた。春の日はうららかに輝いて、祭日の人心を更らに浮き立たした。男も女も僧侶もクララを振りかえって見た。
クララの出家 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
ふくれたるあかき手をあて婢女はしためが泣けるくりやに春は光れり
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
婢女はしためをとゝのふれば
おもひで (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
婢女はしため眠りてくりやさむく
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
この家に竹女と申す女中がいられるに相違ない。それこそは衆生済度しゅじょうさいどのため、仮に卑しき婢女はしためと現じた、大日如来生身の御姿じゃ、早く、早く」
「ハイ、姿は婢女はしためながら、素姓は素晴らしく高貴の姫じゃともっぱら取り沙汰にございます」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
磯宿のこの婢女はしためが言なきはまたくつめたきうろくづがどちか
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
まだそれほどふかくもなしおむかひもいままゐらんゆるりなされと好遇もてなさるゝほど猶更なほさらどくがたくなりて何時いつまでちてもえませねばはゞかりながらくるまひとねがひたしと婢女はしため周旋しうせんのほどたのればそれはなん造作ざうさもなきことなれどつひちがひにおむかひのまゐるまじともまをされず今少いますこしおまちなされてはと澁々しぶ/\にいふは
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
番頭の言葉と婢女はしための言葉、それを綜合して丁寧松は、推理と検討とに耽りだした。
前記天満焼 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その仏勅に従って江戸に参っては見たが、竹女と申す婢女はしためはなはだ少くない。
婢女はしため寄食人かかりゅうど——大家族主義の典型的に、以前は大勢の人々が、ここの家にもいたのであったが、打ちつづいた天災に家計衰え、一人去り二人去り人々去って、今はわずかに肉親だけが
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
婢女はしための間、家士たちのたまり、調理の場所、無数の建物が描かれてあり、そういう建物をグルリと取り巻いた、前庭後庭中庭などの、変化縦横の庭園の様が、同じく精巧に描かれてあった。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
部屋へはいって手をつと、隣りの部屋から婢女はしためが恐る恐る現われた。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「いずれも貧しい婢女はしための様子で、みすぼらしい有様でございます」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
とその姿を認めて、二、三人の婢女はしための驚くのを
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)