天涯てんがい)” の例文
天涯てんがい渺茫べうぼうたる絶海ぜつかい魚族ぎよぞくは、漁夫ぎよふかげなどはこともないから、れるとかれぬとかの心配しんぱいらぬ、けれどあまりに巨大きよだいなるは
そういうものが天涯てんがいからくれば、気象観測の上にも異常数値が報告されるはずである。すくなくとも、つなみは起こるであろう。
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
今はまったく、天涯てんがい、寄るべなき二人とはなったのだ。しかし悔いはしない。卯木もそれが本望といっていたのだから。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分の身は天涯てんがいドコへ行こうとも屈託はないが、君の身の上が、女であってみると、拙者相当の取越し苦労で心配してあげていた、それが、渡りに舟で
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その泣き声は吾ながら悲壮のおんを帯びて天涯てんがい遊子ゆうしをして断腸の思あらしむるに足ると信ずる。御三はてんとしてかえりみない。この女はつんぼなのかも知れない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
待つて居るといふ兩親もあるさうではないか、俺は天涯てんがいの孤兒、何處へ行きやうも無いから、此處に踏み留まる
これは天涯てんがいから飛来したものではなくやはり地から生まれた。それはちょうど現に雨や太陽の熱によって肥土から虫が生まれるように生まれたものであると説く。
ルクレチウスと科学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
これはそもそなんの為であらうか? 僕は僕に手紙を寄せた何人かの天涯てんがいの美人を考へ、つまり僕の女性の読者は水上君の女性の読者よりもはるかに彼等の社交的趣味の進歩してゐる為と断定した。
変遷その他 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ついに大日輪黄帝こうていやみと地の邪神祝融しゅくゆうに打ち勝った。その巨人は死苦のあまり頭を天涯てんがいに打ちつけ、硬玉の青天を粉砕した。星はその場所を失い、月は夜の寂寞せきばくたる天空をあてもなくさまようた。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
天涯倶見月団欒 天涯てんがいともに見る月も団欒だんらんす〕
十九の秋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
私が企てた復仇ふっきゅうを待つまでもなく今天涯てんがいにのがれ出でた相良十吉であったが、風間真人の執念しゅうねんは未だにくつることなくの人の上にかかっているようだ。
空中墳墓 (新字新仮名) / 海野十三(著)
天涯てんがいの孤軍である。「いっそ、よからん!」と、尊氏は胸のうちで言っているかのようだった。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
尽十方じんじっぽうに飛びわす小世界の、あまねく天涯てんがいを行き尽して、しかも尽くる期なしと思わるるなかに、絹糸の細きをいとわず植えつけしかいこの卵の並べるごとくに、四人の小宇宙は
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
天涯てんがい萬里ばんりこの帝國軍艦ていこくぐんかん艦上かんじやうにて、昔馴染むかしなじみ水兵等すいへいら對面たいめんしたものとえる。
彼は、電子望遠鏡の前に立って、その操縦桿をいろいろと操りながら、天涯てんがいくまなく捜査していった。ところがどの位探しても、ロケットの姿は入ってこなかった。
地球盗難 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その実銘々めいめい孤立して山の中に立てこもっていると一般で、隣り合せにきょぼくしていながら心は天涯てんがいにかけ離れて暮しているとでも評するよりほかに仕方がない有様におちいって来ます。
道楽と職業 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
父の領地りょうち焦土しょうどとなり、身は天涯てんがい孤児こじとなった伊那丸、さだめし口惜くやしかろう、もっともである。いずれ、家康もとくと考えおくであろうから、しばらくは、まず落ちついて、体を
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おおかた流汗淋漓りゅうかんりんり大童おおわらわとなって自転車と奮闘しつつある健気けなげな様子に見とれているのだろう、天涯てんがいこの好知己こうちきを得る以上は向脛むこうずねの二三カ所をりむいたって惜しくはないという気になる
自転車日記 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
宇宙線は、天涯てんがいから地球へも飛んでくるふかしぎの放射線である。
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
は七尺の身を天涯てんがいたくし行くこと
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
乗って見たまえとはすでに知己ちきの語にあらず、その昔本国にあって時めきし時代より天涯てんがい万里孤城落日資金窮乏の今日に至るまで人の乗るのを見た事はあるが自分が乗って見たおぼえは毛頭ない
自転車日記 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)