大火傷おおやけど)” の例文
猛火の中から救い出して、自分は半面の大火傷おおやけどを受け、その醜い大火傷の故に、宗三郎に捨てられて、大川に身を投げて死んだ筈です。
猟色の果 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
が、その時の大火傷おおやけど、享年六十有七歳にして、生まれもつかぬ不具かたわもの——渾名あだなを、てんぼうがに宰八さいはちと云う、秋谷在の名物親仁おやじ
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
広い世間には何かの病気か又は大火傷おおやけどのようなことで、眼も鼻もわからないような不思議な顔になったものが無いとは限らない。
父の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「それは仰せどおりしておきました。また先夜の兵火で、大火傷おおやけどをしていますので、それの手当もさせてはおきましたが」
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼には見せなかったが、繃帯ほうたいで包まれた彼の両手は、大火傷おおやけどをしたようにはれあがり、骨はぐにゃぐにゃになっていた。
宇宙戦隊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ある時あやまってランプの火が油壺あぶらつぼに移り、大火傷おおやけどをしたのが原因で、これも死んでしまってから、独り取り残された彼女は、親類へ預けられることになった。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
左右の壁には火のような蒸気スチーム鉄管パイプが一面にぬたくっているので、通り抜けただけでも呼吸いきが詰まって眼がまわる上に、手でも足でも触れたら最後大火傷おおやけどだ。
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
轟然ごうぜんたる爆発。鍋は飛び、炉は砕け、山小屋は寸裂する、十一人のうち、二人即死。かおを半分焼けこがされたの、手の肉をもぎ取られたの、全身に大火傷おおやけどをしたの。
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
釣洋燈つりランプがどうしたことでか蚊帳の上に落ちて、燃えあがったなかに、あたしは眠っていたので、てっきり焼け死んだか、でなければ大火傷おおやけどをしたであろうと、誰も咄嗟に思ったそうだが
おどかしでもしたら立ちのくだろうってんでせた小僧に幽霊を一役やらせたところが、いきなり下から火をつけられてめんくらって逃げ出して来たんだが、こいつはふくらぱぎ大火傷おおやけどをこしらえて
話は横道に外れるが、たらいに入れた湯の湯気の上り方を見れば、だいたいの温度の見当がつくものである。しかしいつか赤ん坊をいきなり盥の熱湯に入れて、大火傷おおやけどをさせた女の話を聞いたことがある。
家庭の人へ (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
ほほのこけた蒼白そうはくの顔の上部、両のびんと額とは大火傷おおやけどのあとのごとくあか黒く光って、ひっつれている。そして眉間みけんと、左右の米かみのところに焼け火箸ひばしで突いたほどのあなのあとが残っているのである。
何のそれほどご案じになることがござりましょう火膨ひぶくれの痕が直りましたらやがて元のお姿に戻られますとなぐさめればこれほどの大火傷おおやけど面体めんていの変らぬはずがあろうかそのような気休めは聞きともないそれより顔を
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
出ることは出たが、六になる方は大火傷おおやけどをした。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
曹操は、仰向けにたおれながら、手をもってその火のはりを受けた。——当然、ひじも、大火傷おおやけどをした。自分の体じゅうから、げくさい煙が立ちのぼった。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
沸騰たぎっているしるこの鍋は宙に飛んで、それが煙花はなびの落ちて来たように、亭主の頭から混乱した見物の頭上に落ちて来ましたから、それをかぶったものは大火傷おおやけどをして
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
この前お前は、ロケットとかいうものを作りそこなって、大火傷おおやけどをしたではないか。いいかね、間違っても、そのカセイなんとかいうものなんぞに、こっちゃならないぞ
火星兵団 (新字新仮名) / 海野十三(著)
妹は全身に大火傷おおやけどを負って虫の息であった。すぐに医師を呼んで応急手当を加えた上で、ともかくも町の病院へかつぎ込んだが、伊佐子はそれから四時間の後に死んだ。
青蛙堂鬼談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「もう、いかん」と、峰越しに逃げのびたが、夏侯蘭は張飛に出会って、その首を掻かれ、護軍韓浩かんこうは、炎の林に追いこまれて、全身、大火傷おおやけどを負ってしまった。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
残虐な悪魔の頭目とうもく、四馬剣尺のために、両脚に大火傷おおやけどをした戸倉八十丸老人は、あれからすぐに、病院へかつぎこまれたが、さいわい、その後、経過は良好で、一週間もすると、ステッキ片手に
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
日本の花火に、鮮麗な赤色光が一般に見られ出したのは、明治八年に洋行して大火傷おおやけどを負って帰朝した両国の鍵屋かぎや弥兵衛がもたらした研究の後である。——それまではなかった。
銀河まつり (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あのコーヒーの棒にさわれば、たちまち大火傷おおやけどをしてしまう。
大宇宙遠征隊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
見ると、とび色の体に無数な傷を負った若者が、両手をはりに吊り上げられたまま、爪先だちに立っていた。大火傷おおやけどでもしたあとか、赤痣あかあざいちめんな顔をゆがめ、苦痛を歯がみで耐えている。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「はいはい。只今。しかし熱い料理や飲料は今、できませんよ。わしもみなさんも大火傷おおやけどしますからね。とにかく困ったものだ。早く人工重力装置の故障が直ってくれないことには、仕事がさっぱりできません。はい只今」
ふしぎ国探検 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その後、この小三しょうさんの奴ア、いたずらして頭に大火傷おおやけどをこさえ、それが十四、五のころで、親とともに一時は村へ舞い戻っていましたが、都の風に染んだ怠け者、またすぐ出ていってしまいました。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)