四海しかい)” の例文
かくの如き大なる責任、大なる天職を以て、ここに大正の天皇は来月高御座たかみくらに座して四海しかいに君臨遊ばす。こういう大典が前に在るではないか。
吾人の文明運動 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
堯典に曰く、二十有八さい放勲ほうくんすなわ徂落そらくせり、百姓考妣ふぼするが如くなりき、三年、四海しかい八音はちいん遏密あつみつせりと。孔子曰く、天に二日無く民に二王無しと。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
「まあ、どうしましょうねえ。暮から、このような、うれしい事ばかり。思えば、きょう、あけがたの夢に、千羽のつるが空に舞い、四海しかいなみ押しわけて万亀ばんきが泳ぎ、」
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
金鍔きんつば二錢にひやく四個よんこあつた。四海しかいなみしづかにしてくるまうへ花見はなみのつもり。いやうもはなしにならぬ。が意氣いきもつてして少々せう/\工面くめんのいゝ連中れんぢうたれ自動車じどうしや……ゑんタクでもい。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
孔子いわずや、四海しかい兄弟けいていなりと、人誰か兄弟なきを憂いん。基督クリストいわずや、わが天にいます父のむねを行う者はこれわが兄弟わが姉妹わが母なりと、人誰か父母なきを憂いん。
父の墓 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
愚夫愚婦ぐふぐふの邪教に沈溺ちんでき惑乱わくらんする、言うにえざるものあり。しかして政府、あにこれを問わざるべけんや。われ聞く、国の王者あるは、なお家の父母あるがごとし。四海しかいの内、みな兄弟なり。
教門論疑問 (新字新仮名) / 柏原孝章(著)
四海しかいなみ静かに、供奉ぐぶの方々も太平の春を喜んだのでござりまして、関白殿とのおん仲もまだその頃はお睦じゅう見えましたのに、それより僅か一年を隔てゝあのようなことが起りましょうとは
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
この教訓に依って、将来かくの如きわざわいを避けんとすれば、何としても人道の上から四海しかい兄弟という理想を実現しなければならぬ。しからざれば、真の平和は来らぬのである。
大戦乱後の国際平和 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
洛陽伽藍記らくやうがらんきふ。帝業ていげふくるや、四海しかいこゝに靜謐せいひつにして、王侯わうこう公主こうしゆ外戚ぐわいせきとみすで山河さんがつくしてたがひ華奢くわしや驕榮けうえいあらそひ、ゑんをさたくつくる。豐室ほうしつ洞門どうもん連房れんばう飛閣ひかく
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
金屏風きんびょうぶ引繞ひきめぐらした、四海しかいなみしずかに青畳の八畳で、お珊自分に、雌蝶雄蝶めちょうおちょう長柄ながえを取って、たちばなけた床の間の正面に、美少年の多一と、さて、名はお美津と云う、逢阪の辻、餅屋の娘を
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかして高御座たかみくらに座して四海しかいに君臨遊ばすことは将来の国の盛事である。
吾人の文明運動 (新字新仮名) / 大隈重信(著)