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同國
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どうこく
嫁はお
艷と
云つて、
同國一ノ
宮の
百姓喜兵衞の
娘で、
兄元太郎の
此が
女房。
束ね
髮で、かぶつては
居るけれども、
色白で
眉容の
美しいだけに
身體が
弱い。
いつぞや、
同國の
人の
許にて、
何かの
話の
時、
鉢前のバケツにあり
合せたる
雜巾をさして、
其の
人、
金澤で
何んと
言つたか
覺えてゐるかと
問ふ。
忘れたり。
お
秋は
夜とも
分かず
晝とも
知らず
朧夜に
迷出でて、あはれ十九を
一期として、
同國浦崎と
云ふ
所の
入江の
闇に
身を
沈めて、
蘆の
刈根のうたかたに、
其の
黒髮を
散らしたのである。
庭の
池の
鯉を、
大小計つてねらひにくるが、
仕かけさへすれば、すぐにかゝる。また、
同國で、
特産として
諸國に
貨する、
鮎釣の、あの
蚊針は、すごいほど
彩色を
巧に
昆蟲を
模して
造る。