吉例きちれい)” の例文
毎年この日に曙の里小野塚鉄斎の道場に秋の大試合が催されて、高点者に乾雲丸、次点の者に坤竜丸を、納めの式のあいだだけ佩用はいようを許す吉例きちれいになっている。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
以前は寺を借りうけたものだが、人寄せには寄りが悪いし、町中では、年じゅう同じ場所というので、集まる顔が変らない。そこで野天が吉例きちれいとなっておるが、——就いてはだな
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その折、吉例きちれいによって、専務の毛利さんと取締の八田さんが余興をやる。毛利さんは義太夫で、八田さんは謡曲だ。皆迷惑だけれど、相手が重役だから、長いものに巻かれて謹聴する。
冠婚葬祭博士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
百難皆除かいじょ御神符ごしんぷとなります段を、氏子中うじこじゅう申伝もうしつたえ、これが吉例きちれいにござりまして、従って、海つもの山つものの献上を、は、はッ、御覧の如く清らかにつかまつりまする儀でござりまして、ひとえにこれ
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
吉例きちれい四國なれば上野國かうづけのくににて廿萬石下總國にて十萬石甲斐三河で廿萬石都合つがふ五十萬石上野國佐位郡さゐのこほり厩橋うまやばし城主格じやうしゆかくに御座候と辯舌べんぜつさわやかに申述なほ申殘しの儀は明日成せられ候せつ越前直々ぢき/\に言上仕つり候と申のべをはれば伊賀亮是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
のあたりにすまふなるだい/\長者ちやうじや吉例きちれいよろ昆布こんぶ狩衣かりぎぬに、小殿原ことのばら太刀たち佩反はきそらし、七草なゝくささと若菜わかなむとて、讓葉ゆづりはつたるが、郎等らうどう勝栗かちぐりんでいはく、あれに袖形そでかたうらなぎさに、むらさき女性によしやうそ。
月令十二態 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
うかゞはんやと評議區々まち/\にて更に決着けつちやくせざりしにぞ山内伊賀亮すゝみ出て申樣はすぐに江戸表へ罷下まかりくだらん事先以て麁忽そこつに似て然べからず其仔細しさいは先年駿河大納言殿の御子息しそく長七郎君も先大坂へ御出の吉例きちれいあれば此先例にまかせ一先大坂へ出張ゆる/\關東くわんとう動靜やうす
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
奉り夫より御登城とじやうの御案内には伊豆守は勿論もちろん西の御丸へなほらせられ候節は酒井左衞門尉さゑもんのじようより御やり一筋獻上けんじやうつかまつり候事吉例きちれいに候へ共左衞門尉は在國ざいこく出羽鶴が岡にまかり在候に付名代みやうだいとして伊豆守より猿毛さるげの御やりすぢ獻上仕り候上樣よりは御祝儀しうぎとして御先箱さきばこ一ツ御打物うちもの一トふり右は雨天に候節は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)