“十(とう)” の例文
それでからもう砂利(じやり)でも針(はり)でもあれと地(つち)へこすりつけて、十(とう)余(あま)りも蛭(ひる)の死骸(しがい)を引(ひツ)くりかへした上(うへ)から、五六間(けん)向(むか)ふへ飛(と)んで身顫(みぶるひ)をして突立(つツた)つた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
目の藥と爲(なす)か知ねど然(さ)にあらず目には忌可(いむべ)き物十(とう)ありと或(ある)醫者どのに聞たりしに中にも風に中(あた)るを忌(い)み又白き物を見るを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
すると妙な口つきをしてくちびるを動かしていましたが、急に両手を開いて指を折って一(ひ)、二(ふ)、三(み)と読んで十(とう)、十一と飛ばし、顔をあげてまじめに
春の鳥 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
十(とう)ずつ、十ぺんかぞえると、かおから手をはなし、スックと立って、なの花ばたけにむかって、よびかけました。
月夜のかくれんぼ (新字新仮名) / 槙本楠郎(著)
吉之丞は、かたちだけの信徒になっても、吉利支丹の行儀(ぎょうぎ)もしらず、十(とう)の掟(おきて)を保つことなどは思いもよらない。
呂宋の壺 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
⦅おれは女(あま)つ子ぢやねえぞ! 他人(ひと)の物笑ひになんぞなるものか! こんな袋の十(とう)をだつて担いでやらあ。
産所すなわち山陰地方でいうハチヤ或いはハチと同類で、越中でトウナイというのもつまりは「十(とう)無(な)い」で、「八(はち)」ということを避けた隠し言葉でありましょう。
あり/\隱(かく)してお出遊(いであそ)ばすのは見(み)えすいて居(を)りますし、さあ私(わたし)の心(こゝろ)はたまりません、一(ひと)つを疑(うたが)ひ出(だ)すと十(とう)も二十(にじふ)も疑(うたが)はしくなつて、朝夕旦暮(あけくれ/\)あれ又(また)あんな嘘(うそ)と思(おも)ふやうになり
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あれを十(とう)かぞへる間眼ばたきをしないで視詰めてゐると目が回つてしまふと人々は驚嘆した。一台の花電車が三日も前から町の上下を運転して、弁当持で便乗する見物客が満員だつた。
熱海線私語 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
十(とう)位だったが、顔は綺麗だし、芸は上手いし、自由な小鳥のように朗らかで、あの気六ヶ敷い団長にすら、この上もなく可愛がられていたから、この陰惨な曲馬団の中でも、彼女だけは
夢鬼 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)