処女きむすめ)” の例文
旧字:處女
処女きむすめのようにずかしがることもない、いいばばあのくせにさ。私の所望のぞみというのはね、おまえさんにかわいがってもらいたいの」
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お前も可愛がったり可愛がられたりした野郎だ、よく見ておきねえ、なにもそんな処女きむすめみたように恥かしがって下を向くことはねえじゃねえか
しかし十七歳の、それも一月後には嫁入ろうとする処女きむすめにとっては、今の「女を憎む男の話」は嬉しいものではなかった。
猿ヶ京片耳伝説 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「よく見たの。」長谷川夫人は自分も処女きむすめあとがへりしたやうな若い気持で愛嬢の顔をさしのぞいた。「どつちがいと思つて。種子田さん?」
太「おめえが何も出る訳はあんめえじゃねえか、そんなら是程頼んでも勘弁は出来やせんか、おらア娘は未だぬしのあるものじゃねえ、処女きむすめでごぜいやす」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
御念ごねんには及びませぬ、閣下、是迄これまでの所、何を申すも我儘育わがまゝそだちの処女きむすめで御座りまする為めに、自然決心もなり兼ねましたる点も御座りましたが、旧冬
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
身体つきも、眼つきも、色気たっぷりと来てやがる癖に、まだ男を知らねえ処女きむすめなんて、誰だって思う者はねえぜ
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
すかすように言い聞かせて、無理に女の手をとって駕籠に乗せようとすると、お絹は男の腕へぶら下がるようにして処女きむすめのようなあどけない甘えた声で言った。
両国の秋 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
警察のやかましいぐらい平気でいるかと思ったら、また存外神経質で処女きむすめのように臆病な性質ところもあった。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
(見ぬ前はそうとも思わなかったが、眼に見た織江の美しさ! 無垢むく、清浄、烈女型、真の処女きむすめの典型的の娘! それを目前に置きながら……)
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
すると、さもうれしそうに莞爾にっこりしてその時だけは初々ういういしゅう年紀としも七ツ八ツ若やぐばかり、処女きむすめはじふくんで下を向いた。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
修行者でも商人あきんどでも宜く巡礼の姿に成って来ることが有るが、汝は手入らずの処女きむすめちげえねえ、口の利きようから外輪そとわに歩く処は、何う見ても男のようだが
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
処女きむすめが他人に肌を弄られたような無気味さと恥辱とに身をふるわしながら、かまきりはいきなり私の指に噛みつこうとした。私はかろくそれを弾き飛ばした。
艸木虫魚 (新字新仮名) / 薄田泣菫(著)
「いや? へえエ、ええことしたうえに、罪を帳消しにしてもらうのがいや? もう、処女きむすめでもあるまいに。みんな、そうするんじゃがなあ。それが、利口だよ」
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
「わりゃ雪女となりおった。が、魔道の酌取しゃくとり枕添まくらぞい芸妓げいしゃ遊女じょろうのかえ名と云うのだ。娑婆しゃば、人間の処女きむすめで……」
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いかさま立派な武士の様子、使者と云えば使者にも取れるが、また胡散うさんにも思われる。それに美貌のあの乙女、処女きむすめとはどうしても受け取れぬ。……とまれ衣裳を
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
女といふものは、亭主持で居ながら、外へ出ると処女きむすめ独身者ひとりものからしい顔をしたがるものなのだ。
ばゝあがね、娘の跡を追掛おっかけたが、居ないから最う仕方がないが、お前さん腹を立っちゃアいけません、そこは処女きむすめで、仮令たとい向うが惚れていても、気障きざだよお止しよと振払うのは娘っ子の情で
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
するとうれしさうに莞爾にツこりして其時そのときだけは初々うゐ/\しう年紀としも七ツ八ツわかやぐばかり、処女きむすめはぢふくんでしたいた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そういう女の一念は、処女きむすめなどの思いとは違いあくどくて凄まじい。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「電鉄の杉山め、車輛を処女きむすめのやうにいたはつてるから可笑をかしい。」
早瀬に過失あやまちをさすまいと思う己の目には、お前の影は彼奴あいつに魔がしているように見えたんだ。お前を悪魔だと思った、己はかたきだ。なかをせいたって処女きむすめじゃない。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(手つかずの処女きむすめを、田舎浪人の又助ごときに!)
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)