きやん)” の例文
二十二三でせうが、存分におきやんで此上もなく色つぽくて、素顏に近いほどの薄化粧が、やけな眼隱しにくづれたのも、言ふに言はれぬ魅力です。
そして恐る/\卓子テーブルの下を覗き込んで見ると、自分が調弄からかひ気味ぎみにそつと触つたのは、おとなしい姉娘のと思ひの外、おきやんな妹娘の足であつた。
きやんの本性は瀧つ瀬の流に似て、心の底に停るもの無しと見えしはあだなれや。扨も是の道だけは思の外の美登利。
一體にきやんなとりなり——きやんとはフラツパーとはいささかちがふ。侠氣をもつ、ハツキリとしてゐる。
下町娘 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
父母ちゝはゝそろひていゑうちこもにてもむべきむすめが、人目ひとめつほど才女さいじよなどばるゝは大方おほかたきやんびあがりの、あまやかされのわがまゝの、つゝしみなき高慢こうまんよりなるべく
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
此時鶴子さんの眼には自分の顏が何處となくきやんに見える。いつか惚れ/″\と見た洗ひ髪の藝者の姿を思ひ出して又自分の影に眺め入る。細君はいつの間にかもう梳櫛を取つて空梳を始める。
俳諧師 (旧字旧仮名) / 高浜虚子(著)
きやんなるむだづかひの終りに
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
この陽氣でおきやんな女の一皮下には、妙な悲劇的な情緒じやうちよのあるのを、平次はまざ/\と見せ付けられたやうな氣がしたのです。
人は怪しがりて病ひのせいかと危ぶむも有れども母親一人ほほ笑みては、今におきやんの本性は現れまする、これは中休みと子細わけありげに言はれて、知らぬ者には何の事とも思はれず
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
盛り場の女などが奴風やつこふうをするやうになり、奴氣質かたぎを賣りものにしたが、それはきやんで、パリ/\とした、いい氣つぷ、ものに拘はらない、金に轉ばないといふたてまへで江戸藝者など
凡愚姐御考 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
「使ひに來たのはお紋でした。可哀想にあの娘も殺されてしまひましたが、おきやんで、明けつ放しで、滅法可愛らしくて、人に物を頼んで嫌と言はせない娘でしたよ」
ひとあやしがりてやまひのせいかとあやぶむもれども母親はゝおや一人ひとりほゝみては、いまにおきやん本性ほんしようあらはれまする、これは中休なかやすみと子細わけありげにはれて、らぬものにはなんことともおもはれず
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そこにゐる時分は黄八丈の着附できりりとしてゐたといふが、人情本にのこる小三金五郎で有名な、がくの小三の名をとつて、小川をがは小三といふ藝名で出た位だから、きやんだつたに違ひない。
河風 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
我儘で少しおきやんで、そして出來立ての糝粉細工のやうに綺麗だつたお喜代にくらべて、平凡で世間並で、何んの魅力もないお百合は、あまりにも冴えない跡取りだつたのです。
格別利發ともはげしいとも人は思ふまじ、父母そろひて家の内に籠り居にても濟むべき娘が、人目に立つほど才女など呼ばるゝは大方おきやんの飛びあがりの、甘やかされの我まゝの
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
巽巳藝妓たつみげいしやきやんな名や、戲作者爲永春水ためながしゆんすゐ述るところの「梅暦うめごよみ」の色男丹治郎などは、つい先頃までの若者を羨ましがらせた代物しろものだ。その狹斜が生んだ、江戸末期的代表デカタンが丹治郎だ。
花火と大川端 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
お屋敷風とも町家風とも付かぬ、十八九の賢さうな瓜實顏うりざねがほ、何處かおきやんなところはありますが、育ちは良いらしく、相應に美しくも可愛らしくもあるうちに何となく品があります。
格別利発ともはげしいとも人は思ふまじ、父母そろひて家の内にこもりゐにても済むべき娘が、人目に立つほど才女など呼ばるるは大方おきやんの飛びあがりの、甘やかされの我ままの
ゆく雲 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
お絹は始終うつ向いて、默り込んで居りますが、それは町娘らしい、おきやんと柔順さと、賢こさと無智と、矛盾した性格をたくみにあしらつた、まことに愛すべき存在らしく見えました。
今におきやんの本性は現れまする、これは中休みと子細わけありげに言はれて、知らぬ者には何の事とも思はれず、女らしう温順しう成つたと褒めるもあれば折角の面白い子を種なしにしたと誹るもあり
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
不思議な美しを持つた娘——おきやんで柔順で、賢こくて無智で、顏の道具の揃はないのが、かへつて一種の魅力になつてゐた矛盾だらけな江戸娘は、自分をあやめた者の名も言はずに、一刻々々
成程桃色の啖呵たんか位は切りさうなおきやんな娘です。
これは又恐しいおきやん