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佯
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いつわ
ふりがな文庫
“
佯
(
いつわ
)” の例文
小さな叫び声で「おっ
母
(
かあ
)
、お
前
(
めえ
)
つくばろうとしてるな。——おうい、
父
(
とう
)
ちゃん!」と言い、そして、そういう
佯
(
いつわ
)
りの警報を発してから
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
計介苦痛を忍びながら、
佯
(
いつわ
)
って臆病な百姓の風を装ったので、幸い間諜の疑いは晴らされたが、その代り人夫として酷使される事になった。
田原坂合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
おたきの
佯
(
いつわ
)
らざる本心が咄嗟にあらゆる計算をふみはづしてその全貌を暴露してゐた。一日の米に価ひしない子供であつた。
老嫗面
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
呉一郎殿が
真
(
まこと
)
の狂気か
佯
(
いつわ
)
りかが
相判
(
あいわか
)
りますることが、罪人となられるか、なられぬかの境い目と
承
(
うけたまわ
)
りますれば、何をお隠し申しましょう……。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
われわれの前にあの方の
佯
(
いつわ
)
られていた brilliant な調子のためすっかり
掩
(
おお
)
いかくされていたに過ぎないように思われるものだった。
楡の家
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
▼ もっと見る
とは言うものの、「
佯
(
いつわ
)
りのうそ」でも結局それがほんとうに活きていた人間の所産である限り、やはりそれはそれとしての標本として役立つかもしれない。
柿の種
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
一人名はシマンタムバ、この者ソグノ伯が新王擁立の力あるを以て、請うてその女を
娶
(
めと
)
り、伯
佯
(
いつわ
)
ってこれを許し、娘と王冠を送るを迎えた途中で
掩殺
(
えんさつ
)
さる。
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
しかし彼は幾度も心を取り直して生活に向かっていった。が、彼の思索や行為はいつの間にか
佯
(
いつわ
)
りの響をたてはじめ、やがてその滑らかさを失って凝固した。
冬の日
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
が、順慶の告白のうちで最も奇異の感に打たれるのは、彼は最初はほんとうに失明したのではなく、座頭の資格を得るために
佯
(
いつわ
)
って盲人になったのであった。
聞書抄:第二盲目物語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
が、そう思うしりから、彼の無事な顔を不意にみた家のものたちの驚喜、いそいそと、またおろおろと彼を迎える肉親の
佯
(
いつわ
)
りのない表情が、想像できなくもない。
光は影を
(新字新仮名)
/
岸田国士
(著)
さうして絶えず妹の側へつききりになつて、彼が兄に対する愛情とその不可思議な運命とに関心を持つてゐるものだと
佯
(
いつわ
)
つて、そくそく彼女に言ふことを聞かせた。
吸血鬼
(新字旧仮名)
/
ジョン・ウィリアム・ポリドリ
(著)
前日、某氏の
別筵
(
べつえん
)
に、一老生、
佯
(
いつわ
)
りて酔態を
作
(
な
)
し、抗然として坐客を品題して曰く、某は十万石の侯なり、某は十五万石の侯なりと。各々低昂ありて、頭より尾に到る。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
ある人妻が
佯
(
いつわ
)
って、井戸の中に身を投げたように見せかけて、どれ程夫が嘆き悲しむか、それに依って夫の、自分に対する愛情を測ると云う話を読んだことがございました。
遺書に就て
(新字新仮名)
/
渡辺温
(著)
燕王
弁疏
(
べんそ
)
する能わざるところありけん、
佯
(
いつわ
)
りて狂となり、号呼疾走して、市中の民家に
酒食
(
しゅし
)
を奪い、乱語妄言、人を驚かして省みず、
或
(
あるい
)
は土壌に
臥
(
ふ
)
して、時を
経
(
ふ
)
れど覚めず
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
当人の公言するごとく
佯
(
いつわ
)
りなき事実ではあるが、いまだに
成効
(
せいこう
)
の
曙光
(
しょこう
)
を拝まないと云って、さも苦しそうな声を出して見せるうちには、少なくとも五割方の
懸値
(
かけね
)
が
籠
(
こも
)
っていた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
現実とは、もしそれが実現を俟つ概念でなければ
佯
(
いつわ
)
りである。かくて歴史の現実性——歴史的現段階性——は或る意味に於ける実践概念を俟つのでなければ誤りであるであろう。
イデオロギーの論理学
(新字新仮名)
/
戸坂潤
(著)
私は辰夫に、昨日は多忙で君の家へ廻れなかつたと
佯
(
いつわ
)
りを言はねばならなかつた。併し毎日頼まれるので、私も根気よく毎日辰夫の母を訪ねた。
母
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
菜穂子はそのお辞儀の仕方を見ると、突然、明が彼女の前に立ち現われたときから何かしら自分自身に
佯
(
いつわ
)
っていた感情のある事を鋭く自覚した。
菜穂子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
これは昔
虹汀
(
こうてい
)
様が、その絵巻物を焼いたと
佯
(
いつわ
)
って実は、
旧
(
もと
)
の形のままにして仏像へ納めておかれたものではあるまいか。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
上帝はそれぞれの職を勉め
佯
(
いつわ
)
らず正しく暮す者を愛すと、アントニウスまことに大聖だったが、この貧乏至極な履工は、上帝の眼に、アントニウスと何の甲乙なかったと。
十二支考:10 猪に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
彼は論理の権威で自己を
佯
(
いつわ
)
っている事にはまるで気が付かなかった。学問の力で鍛え上げた彼の頭から見ると、この明白な論理に
心底
(
しんそこ
)
から大人しく従い得ない細君は、全くの解らずやに違なかった。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
王急に走りて
隄
(
つつみ
)
に登り、
佯
(
いつわ
)
って
鞭
(
むち
)
を
麾
(
さしまね
)
いで、後継者を招くが如くして
纔
(
わずか
)
に
免
(
まぬか
)
れ、而して
復
(
また
)
衆を率いて
馳
(
は
)
せて入る。平安
善
(
よ
)
く
鎗刀
(
そうとう
)
を用い、向う所敵無し。燕将
陳亨
(
ちんこう
)
、安の為に斬られ、徐忠亦
創
(
きず
)
を
被
(
こうむ
)
る。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
私は辰夫に、昨日は多忙で君の家へ
廻
(
まわ
)
れなかったと
佯
(
いつわ
)
りを言わねばならなかった。併し毎日頼まれるので、私も根気よく毎日辰夫の母を訪ねた。
母
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
私は心の圧しつぶされそうなのをやっと
耐
(
こら
)
えながら、表面だけはいかにももの静かな様子を
佯
(
いつわ
)
っていた。
楡の家
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
(但し、藤波氏は全然無関係)コンドルは
斯
(
か
)
くして小生の妻に
佯
(
いつわ
)
りの親切を尽す一方
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「
佯
(
いつわ
)
りのない愚見だ」とまた主人が寸評を
挿入
(
そうにゅう
)
する。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
蓮池の自宅の奥に
数寄
(
すき
)
を
凝
(
こ
)
らいた茶室を造って、お八代に七代とかいう姉妹の遊女を知行所の娘と
佯
(
いつわ
)
って、
妾
(
めかけ
)
にして引籠もり、
菖蒲
(
しょうぶ
)
のお節句にも病気と称して殿の御機嫌を伺わなんだ。
名君忠之
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
静かに、今のままのよそよそしい生活に堪えていようという気力がなくなったのではなく、そのように自己を
佯
(
いつわ
)
ってまで、それに堪えている理由が少しも無くなってしまったように思えたのだ。
菜穂子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
その
佯
(
いつわ
)
りの大胆と、面に似た白痴めく虚しさが美しかつた。
吹雪物語:――夢と知性――
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
そこいら界隈の村里へ出て、美しい女を探し出すと、
馴
(
な
)
れ馴れしく側へ寄って、あなたの絵姿を描いて差上げるからと
佯
(
いつわ
)
って、山の中へ連れ込んで、打ち殺してモデルにしようと企てたが……
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
それが手紙を書く彼女の気持を
佯
(
いつわ
)
らせた。
菜穂子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
何卒
(
どうぞ
)
わたくし共一同の
佯
(
いつわ
)
りのない
赤心
(
まごころ
)
をお酌み取り下さいまして、この上とも末永く御贔屓を賜わりますように、団員一同を代表致しまして、わたくしから幾重にもお願い申上る次第でございます
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
佯
漢検1級
部首:⼈
8画
“佯”を含む語句
佯狂
佯撃
佯狂垢汗
佯狂苦肉
倘佯
露佯