乳母おんば)” の例文
わたくしの病気は実は是々これ/\といいましたが、其の事は乳母おんばにも云われないくらいな訳ですが、其処そこが親馬鹿のたとえの通り、おさげすみ下さるな
……乳母おんばさききゃれ。ひめにようつたへたもれ、家内中かないぢゅうはや就褥ねかしめさと被言おしゃれ、なげきにつかれたればむるはぢゃうぢゃ。ロミオは今直いますぐまゐらるゝ。
貴女、それこそ乳母おんば日傘で、お浅間へ参詣にいらしった帰り途、円い竹のらちつかまって、御覧なすった事もありましょう。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「お前から勧めているのじゃアないか。……ただの乳母おんばさんとはちがうようだなあ」
前記天満焼 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
オリオンの乳母おんばさんがお前さんの曾孫ひいまごでしょう。
越えて三歳みッつになる時、母親は蠣殻町かきがらちょう贔屓客ひいききゃくに、連児つれこは承知の上落籍ひかされて、浜町に妾宅を構えると、二年が間、蝶吉は、乳母おんば日傘で、かあちゃん、かあちゃんと言えるようになった。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
し遊ばせよ、あなたはあれ怜悧りこう思召おぼしめして目をけていらツしやいますが、今朝けさ合羽屋かつぱや乳母おんばさんが店でおばうさんを遊ばしてそばで、弥吉やきちが自分のかゝとの皮をいてべさせたりして
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
下人 おかたさま、お客人きゃくじんわたらせられ、御膳部ごぜんぶました、貴下こなたをばおめしひいさまをばおたづね、乳母おんばどのはお庖厨だいどころ大小言おほこゞとなにもかも大紛亂おほらんちき小僕わたくしめはこれからお給仕きふじまゐらにゃなりませぬ。
ももッたア出すなッてえ、肥満ふとった乳母おんばどんがじれッたがりゃしめえし、厭味ッたらしい言分だが、そいつも承知で乗ってるからにゃ、他様ほかさまの足を踏みゃ、引摺下ひきずりおろされる御法だ、と往生してよ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
飯島様の孝助殿を見習えと叱り付けますものだから、台所のおさんまでが孝助さんは男振おとこぶりもよし人柄もよし、優しいと誉め、乳母おんばまでが彼是かれこれと誉めはやすものだから、娘も、殿様お笑い下さるな
ロミオ (俄に起ち上りて)おゝ、乳母おんば
……次にまた浴衣に広袖どてらをかさねて持って出たおんなは、と見ると、あから顔で、太々だいだいとした乳母おんばどんで、大縞のねんね子半纏ばんてんで四つぐらいな男のおぶったのが、どしりと絨毯に坊主枕ほどの膝をつくと
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「まさか乳母おんばどんじゃあるめえな。」
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)