両岸りょうがん)” の例文
旧字:兩岸
その相迫りて危く両岸りょうがんの一点に相触れんとするあたり八見橋やつみばし外濠そとぼりの石垣を見せ、茂りし樹木のあいだより江戸城の天主台を望ませたり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
河辺かわべには、毎日まいにちいくにんということなく、無数むすう人々ひとびと両岸りょうがんならんでりをしました。そして、金色こんじきうお自分じぶんろうとおもったのでありました。
金の魚 (新字新仮名) / 小川未明(著)
八つの橋をモルダウ河に渡して両岸りょうがんまたがっているプラハの都府で、幾百年かの旧慣に縛られている貴族のうちに、千八百七十五年十二月の九日に生れたということです。
いつかもここをのぼって行った。いいや、此処ここじゃない。けれどもずいぶんよくているぞ。川の広さも両岸りょうがんの崖、ところどころのの青草。もう平らだ。みんな大分溯ったな。
台川 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ところで、今度、隅田川両岸りょうがん人払ひとばらい、いや人よせをして、くだんの陣羽織、菊綴、葵紋服あおいもんぷく扮装いでたちで、拝見ものの博士を伴ひ、弓矢を日置流へぎりゅうばさんで静々しずしず練出ねりだした。飛びも、立ちもすれば射取いとられう。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
戸外おもて矢張やは戸外おもてらしく、わたくしじきなんともいえぬほがらかな気持きもちになりました。それに一かわ両岸りょうがんがのんびりとひらけてき、そこらじゅうにはきれいな野生やせいはなが、ところせきまでにおっているのです。
夏の日はすでに沈んで、空一面の夕焼は堀割の両岸りょうがんに立並んだ土蔵の白壁をも一様に薄赤く染めなしていると、そのさかさまなる家の影は更に美しく満潮の澄渡すみわたった川水の中に漂い動いている。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
両岸りょうがんにはくさ雑木ぞうきがしげっていました。
遠くで鳴る雷 (新字新仮名) / 小川未明(著)