一方いっぽう)” の例文
男の子たちがこんなふうに批評ひひょうしている一方いっぽうでは、女の子はまた女の子らしく、少しちがった見方で、話がはずみだしている。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
それはまだたまごからいくらもたない子雁こがんで、たいそうこましゃくれものでしたが、その一方いっぽう子家鴨こあひるむかってうのに
その一方いっぽう、痣蟹もたまたまこの秘密をぎだして、本国で墓穴の建築図などを手に入れ、日本へ帰って来たのだ。すべての秘密はそのパチノ墓穴に秘められているのだよ。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
もっと一方いっぽうは、そんなふうに——よし、村のものの目からは青鬼あおおに赤鬼あかおにでも——ちょうの飛ぶのも帆艇ヨットかと見ゆるばかり、海水浴にひらけているが、右の方は昔ながらの山のなり真黒まっくろ
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そこへとびこんで行ったわたしが、片手かたてでマレイのすきに、もう一方いっぽうの手でそのそでにしっかりしがみついたとき、マレイは、やっと、わたしのただごとでないようすを見てとりました。
兄弟問答又当時世間一般の事であるが、学問とえば漢学ばかり、私の兄も勿論もちろん漢学一方いっぽうの人で、ただ他の学者と違うのは、豊後ぶんご帆足万里ほあしばんり先生のりゅうんで、数学を学んで居ました。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
しかし、にんじんと姉のエルネスチイヌとは、一方いっぽうがたかの知れた女の子だのに、これは肩と肩とを並べてみないとわからない。そこで、姉のエルネスチイヌは、爪先つまさきで背伸びをする。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
しかもその主人は、人なみすぐれた器量と学識をもち落人おちゅうどの境遇でこそあったが、わしらのようないやしさなく、何処へ出しても一方いっぽうの大将として恥かしくない人品とこつがらをも備えておられた。
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ただ、ごみ箱へすてられるためにばかり運ばれてくるとして、それでいいものだろうか。しかし、一方いっぽうには、くさりかけた一山いくらのものでさえも、十分じゅうぶんにはたべられない人びとが大ぜいいるのに。
水菓子屋の要吉 (新字新仮名) / 木内高音(著)
一方いっぽうではまたたいへんにそんをするというようなぐあいで、みんなの気持きもちがいつも一つではなかったから、おこるものもあれば、またよろこぶものがあり、なかにはくものまたわらうものがあるというふうで
明るき世界へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
広庭ひろにわ牡丹ぼたんてん一方いっぽう
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
あらしはますますつのる一方いっぽうで、子家鴨こあひるにはもう一足ひとあしけそうもなくなりました。
「じゃ、そういうかたがおあんなさるんですね、」とわずか一方いっぽう切抜きりぬけようとした。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
けれども夜毎々々よごとよごとに、それがおよげる場所ばしょせまくなる一方いっぽうでした。