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せうじう
勘次の
家を
包んだ
火は
屋根裏の
煤竹を一
時に
爆破させて
小銃の
如き
響を
立てた。
其の
響は
近所の
耳を
驚かした。
其の
人々が
驅けつけた
時は
棟はどさりと
落ちて、
疾風の
力を
凌いで
空中遙に
焔を
揚げた。
『
何、
左樣でない、
此獸は
泥土と、
松脂とで、
毛皮を
鐵のやうに
固めて
居るのだから、
小銃の
彈丸位では
容易に
貫く
事が
出來ないのさ。』と
私は
慰めた。
すでに一
隻は
右舷より
左舷に、
他の一
隻は
左舷より
右舷に、
見る
間に
甲板傾き、
濤打上げて、
驚き
狂ふ
海賊共は、
大砲小銃諸共に、
雪崩の
如く
海に
落つ。