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じやくばく
沖なる
島山の
頂は
紫嵐に
包まれ、
天地見るとして
清新の
氣に
充たされて
居る
時、
濱は
寂寞として
一の
人影なく、
穩かに
寄せては
返へす
浪を
弄し
四隣は
氣味の
惡い
程物靜で、たゞ
車輪の
輾る
音と、
折ふし
寂寞とした
森林の
中から、
啄木鳥がコト/\と、
樹の
幹を
叩く
音とが
際立つて
聽ゆるのみであつたが、
鐵車は
進み
進んで
此樣な
孤島に
鍛冶屋などのあらう
筈はない、
一時は
心の
迷かと
思つたが、
决して
心の
迷ではなく、
寂莫たる
空にひゞひて、トン、カン、トン、カンと
物凄い
最早疑はれぬ。