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さツ
心持余程の
大蛇と
思つた、三
尺、四
尺、五
尺、四
方、一
丈余、
段々と
草の
動くのが
広がつて、
傍の
谷へ一
文字に
颯と
靡いた、
果は
峯も
山も一
斉に
揺いだ
と一
心不乱。
颯と
木の
葉を
捲いて
風が
南へ
吹いたが、
忽ち
静り
返つた、
夫婦が
閨もひツそりした。
真中に
先づ
鰐鮫が
口をあいたやうな
尖のとがつた
黒い
大巌が
突出て
居ると、
上から
流れて
来る
颯と
瀬の
早い
谷川が、
之に
当つて
両に
岐れて、
凡そ四
丈ばかりの
瀧になつて
哄と
落ちて
『だッて、
私は
先きには
斯麽に
小さかなかつたんですもの、なかつたんですもの!
眞箇に
餘程酷いわ、さうよ!』