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きいろみ
この
黄味の強い赤い
夕陽の光に照りつけられて、見渡す人家、堀割、石垣、
凡ての物の側面は、その角度を鋭く鮮明にしてはいたが
赤色は
棗の実の赤色にして
烟れる
焔の色(黒き赤)と
銀色の灰色(灰の赤)とに分たれ、緑には飲料茶の緑、
蟹甲の緑、また
玉葱の
心の緑(
黄味ある緑色)、
蓮の芽の緑(
明き
黄味ある緑)
日のまだ
落ちない
内から
庭を
覗いて
居た
月が
白く、
軈てそれが
稍黄色味を
帶びて
來て
庭の
茂つた
柿の
木や
栗の
木にほつかりと
陰翳を
投げた。
根が
幾日もぐつしりと
水に
浸つてた
大豆は
黄色味の
勝つた
褐色の
莢も
幹も
泥で
汚れた
樣に
黒ずんで
居た。
田圃の
榛の
木は
疾に
花を
捨てゝ
自分が
先に
嫩葉の
姿に
成つて
見せる。
黄色味を
含んだ
嫩葉が
爽かで
且つ
朗かな
朝日を
浴びて
快い
光を
保ちながら
蒼い
空の
下に、まだ
猶豫うて
居る
周圍の
林を
見る。