あぢ)” の例文
そのわすがたあぢかされて、ことくが——たび思出おもひだしては、歸途かへりがけに、つい、かされる。——いつもかへとき日暮ひぐれになる。
いま餘波なごりさへもないそのこひあぢつけうために! そなた溜息ためいきはまだ大空おほぞら湯氣ゆげ立昇たちのぼり、そなた先頃さきごろ呻吟聲うなりごゑはまだこのおいみゝってゐる。
一に好色、二に酒のあぢ、三にさんげの歌枕、わが思ふ人ありやなしやと問ふまでもなし都鳥、忘れな草の忘れられたるなほいとし。
第二真珠抄 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
野々宮君の話では本郷で一番うまうちださうだ。けれども三四郎にはたゞ西洋料理のあぢがする丈であつた。然しべる事はみんなべた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そのばん伯父をぢさんも友伯父ともをぢさんもばれてきましたが、『押飯おうはん』とつてとりにくのおつゆあぢをつけた御飯ごはん御馳走ごちさうがありましたつけ。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
たゞし、そのころは、まだ湯豆府ゆどうふあぢわからなかつた。眞北まきたには、湯豆府ゆどうふ、たのしみなべ、あをやぎなどと名物めいぶつがあり、名所めいしよがある。
湯どうふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それで、それが、小劍の多くの作品のなかに、あぢをつけるために、しばしば、出てゐて、小説をおもしろくしてゐるところがある。
「鱧の皮 他五篇」解説 (旧字旧仮名) / 宇野浩二(著)
などと年甲斐としがひもなくをとこぴきがそんなくだらないことをかんがへたりするのも、麻雀マアジヤン苦勞くらうした人間にんげんでなければわからないあぢかもれない。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
新秋しんしうもちいゝかぜすだれとほしてく、それが呼吸氣管こきうきくわんまれて、酸素さんそになり、動脈どうみやく調子てうしよくつ………そのあぢはへない。
ねこ (旧字旧仮名) / 北村兼子(著)
初鮏は光り銀のごとくにしてすこしあをみあり、にくの色べにをぬりたるがごとし。仲冬の頃にいたればまだらさびいで、にくくれなうすし。あぢもやゝおとれり。
びんそこになつた醤油しやうゆは一ばん醤油粕しやうゆかすつくんだ安物やすもので、しほからあぢした刺戟しげきするばかりでなく、苦味にがみさへくははつてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
あまねく山をめぐらしめ、さて最後にさけびていふ、クラッソよ、黄金こがねあぢはいかに、告げよ、汝知ればなりと —一一七
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
先刻せんこくたきのやうに降注ふりそゝいだ雨水あめみづは、艇底ていてい一面いちめんたまつてる、隨分ずいぶん生温なまぬるい、いやあぢだが、其樣事そんなことは云つてられぬ。兩手りようてすくつて、うしのやうにんだ。
しかあぢなるものはおほくはまた同時どうじ營養えいやうにもよろしいので、ひと不知不識しらず/″\營養えいやうところてん配劑はいざい妙機めうぎがある。
建築の本義 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
このびんには『どく』とはいてありませんでした、其故それゆゑあいちやんはおもつてそれをあぢはつてました、ところが大變たいへんあぢかつたので、⦅それは實際じつさい櫻實漬さくらんばうづけ
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
來年らいねんはこれよりもうつくしい初日はつひをがみたいものだ。』とつた言葉ことば其言葉そのことばかたおぼえてて、其精神そのせいしんあぢはうて、としとも希望きばうあらたにし
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
著者ちよしやさらすゝんで地震動ぢしんどう性質せいしつあぢはひ、それによつて震原しんげん位置いちをも判斷はんだんすることに利用りようしてゐるけれども、これは一般いつぱん讀者どくしやのぞべきことでない。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
山田やまだすで其作そのさく版行はんかうしたあぢを知つてるが、石橋いしばしわたしとは今度こんど皮切かはきりなので、もつと石橋いしばしは前から団珍まるちんなどに内々ない/\投書とうしよしてたのであつたが、かくして見せなかつた
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「奥べには鴨妻ばひ、つべにあぢむら騒ぎ」(巻三・二五七)、「なぎさには味むら騒ぎ」(巻十七・三九九一)の如く実際味むらの居る処として表わしたものもあり
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
かしくけではあられぬはるこほりイヤぼくこそが結局けつきよくなりいもといふものあぢしらねどあらばくまであいらしきか笑顔えがほゆたかにそでひかへてりやうさん昨夕ゆふべうれしきゆめたりお前様まへさま学校がくかう
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それ以前いぜんうたは、みな表面ひようめん景色けしきんだようにえても、ほんとうにあぢはつてると、たゞのうはっつらだけのところで、實際じつさい景色けしき見据みすゑたものだ、といふことが出來できません。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
月日つきひともきず疼痛いたみうすらぎ、また傷痕きずあとえてく。しかしそれとともくゐまたるものゝやうにおもつたのは間違まちがひであつた。彼女かのぢよいまはじめてまことくゐあぢはつたやうながした。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
疫病にかゝつて死ななかつたなら、今でも賣りに行つてゐたかもしれない。しかも、このをんなの賣る干魚は、あぢがよいと云ふので、太刀帶たちが、缺かさず菜料さいれうに買つてゐたのである。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
そして格別かくべつあぢだとはんばかりにのどらした。さむさもさむさだが、自分じぶん眼玉めだまがたべられるなんていたので、おもわずブルルッと身震みぶるひしたペンペは、さつそく片方かたほう眼玉めだまをたべてみた。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
山岳さんがく溪流けいりゆうにはあまりにふれませんが、やはり特有とくゆううをがゐます。いはな、やまめ、うぐひ、あゆなどはそのなかおもうをで、高山こうざんみづきよみきつてるように、そのにくも、くさみがなく、あぢがいゝ。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
あぢ素氣そつけもないことをツて、二人はまただまツてつづける。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
六 粗食そしよくにもあぢあり。
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
あめ釃酒したみあぢめて
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
にがき世のあぢ物のうら
我が愛する詩人の伝記 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
物のあぢ
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
一に好色、二に酒のあぢ、三にさんげの歌枕。わが思ふ人ありやなしやと問ふまでもなし都鳥、忘れな草の忘れられたるなほいとし。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
はちきたないものではりません。もしお前達まへたち木曾きそでいふ『はち』をれて、あたゝかい御飯ごはんうへにのせてべるときあぢおぼえたら
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
が、きやくたうがつまいが、一向いつかう頓着とんぢやくなく、此方こつち此方こつち、とすました工合ぐあひが、徳川家時代とくがはけじだいからあぢかはらぬたのもしさであらう。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
宗助そうすけ過去くわこいて、こと成行なりゆきぎやくながかへしては、この淡泊たんぱく挨拶あいさつが、如何いか自分等じぶんら歴史れきしいろどつたかを、むねなか飽迄あくまであぢはひつゝ
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
母たる者の子にいかめしとみゆる如く彼我にいかめしとみゆ、きびしき憐憫あはれみあぢ苦味にがみを帶ぶるものなればなり 七九—八一
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
一層いつそうあぢかろとり丸燒まるやきなどはなか/\の御馳走ごちさうで、いまわたくしには、世界せかい第一だいいちのホテルで、世界せかい第一だいいち珍味ちんみきようせられたよりも百倍ひやくばいうれしくかんじた。
焦燥あせつてほりえようとしては野茨のばらとげ肌膚はだきずつけたり、どろ衣物きものよごしたりにが失敗しつぱいあぢめねばならぬ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
さけ時節じせつにて、小千谷をぢや前川ぜんせんは海にてうするの大河なれば今とりしをすぐに庖丁はうちやうす。あぢはひ江戸にまされり。一日さけをてんぷらといふ物にしていだせり。
だれでも實際じつさいあたつて一々いち/\營養えいやう如何いかん吟味ぎんみしてものはない、だい一にあぢ目的もくてきとしてふのである。
建築の本義 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
とにかく球突たまつきといふものはすこあぢが分つてくると、じつにデリケエトな興味けうみのある勝負せうふ事だ。
文壇球突物語 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
しかいまこそあまったるうえてをるうぬ今夜こんや推參すゐさんに、やがてにがあぢせてくれうぞ。
「しるこ」は西洋料理せいやうりやうり支那料理しなりやうりと一しよに東京とうきやうの「しるこ」をだい一としてゐる。(あるひは「してゐた」とはなければならぬ。)しかもまだ紅毛人こうもうじんたちは「しるこ」のあぢつてゐない。
しるこ (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
あぢめて同月どうげつくと、完全くわんぜんなる大土器だいどきおよ大土器だいどき下部かぶれて上部じやうぶのみを廢物利用はいぶつりようしたかとおもふのと、土器製造用どきせいざうよう石具せきぐかとおもふのと、鋸目のこぎりめきざみたる獸牙じうがとをした。大當あたあたりである。
旅行りよかうして旅宿やどいてこのがつかりするあぢまた特別とくべつなもので、「疲勞ひらう美味びみ」とでもはうか、しか自分じぶん場合ばあひはそんなどころではなくやまひ手傳てつだつてるのだからはなからいきねつ今更いまさらごとかん
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
がそれはもちろん、實際じつさい以上いじよううたらしいあぢをつけようとしてゐます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
ふやうなものを一しよにしたやうな一しゆめうあぢがしました
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
あまかはあぢむる。
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
蓮根はす蓮根はすとははず、蓮根れんこんとばかりとなふ、あぢよし、やはらかにして東京とうきやう所謂いはゆる餅蓮根もちばすなり。郊外かうぐわい南北なんぼくおよみな蓮池はすいけにて、はなひらとき紅々こう/\白々はく/\
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
それをへば紫蘇しそあぢがして、チユー/\ふうちに、だん/\たけのこかはあかそまつてるのもうれしいものでした。このおひなむら髮結かみゆひむすめでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
さけ時節じせつにて、小千谷をぢや前川ぜんせんは海にてうするの大河なれば今とりしをすぐに庖丁はうちやうす。あぢはひ江戸にまされり。一日さけをてんぷらといふ物にしていだせり。