麺包パン)” の例文
家内は、ひなでも養うように、二人の子供を前に置いて、そのジャムをめさせるやら、菓子麺包パンにつけて分けてくれるやらした。
芽生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
しかし人が麺包パンを遣ろうと思って、手を動かすと、その麺包が石ででもあるかのように、犬の姿は直ぐ見えなくなる。その内皆がクサカに馴れた。
鸚鵡あうむは自分達が朝の食事を取る度にけたたましい声を立てて食物しよくもつの催促をするので、夫人は何時いつも「静かになさい」と云ひなが麺包パンを与へられた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
食事は朝、麺包パン、スープ等。ひるかゆ、さしみ、鶏卵等。晩、飯二碗、さしみ、スープ等。間食、葛湯くずゆ、菓子麺包等。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
第一、何処へかお出掛けになる時はいつでも俺がお伴を仰付あふせつかるから子、君達が指でもさせば直ぐワンと喰付くらひつく。麺包パンの一きれや二片呉れたからつて容赦は無いよ。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
麺包パンと水とで生きていて、クリスマスが来ても、子供達にもみの枝に蝋燭ろうそくを点して遣ることも出来ないような木樵きこりのにも、幸福の青い鳥はかごの内にいる。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
卓には麺包パンあり、莱菔だいこんあり。一瓶の酒を置いて、丐兒かたゐあまたさかづきのとりやりす。一人として畸形かたはならぬはなし。いつもの顏色には似もやらねど、知らぬものにはあらず。
逾越すぎこしと云へる「たね入れぬ麺包パンまつり」近づけり。祭司さいしをさ学者たち、如何いかにしてかイエスを殺さんとうかがふ。ただ民をおそれたり。さて悪魔十二のうちのイスカリオテととなふるユダにきぬ。
LOS CAPRICHOS (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
そしたら技師の指図さしづだとて腸詰を一斤と麺包パンを一つ持つて来て呉れて、それから砂を積むだ別の無蓋車に移された。今度は軟かで坐り心地が羽蒲団のやうだ。で、砂の上に座つて腸詰を食ひながら
椋のミハイロ (新字旧仮名) / ボレスワフ・プルス(著)
また洋字に改むるものは、なお米飯をもって麺包パンに代え、味噌をもって酥酪そらくかえるがごとし。その滋養はまさるるといえども、現にその不便をる。しかれども、別に新字を作るものに勝るることあり。
平仮名の説 (新字新仮名) / 清水卯三郎(著)
ばつて來る麺包パンの匂もする。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
お雪はひなでも養うように、二人の子供を前に置いて、そのジャムをめさせるやら、菓子かし麺包パンにつけて分けてくれるやらした。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
しかし日本の飯はその家によつて堅きを好むとか柔かきを好むとか一様でないから、西洋の麺包パンと同じ訳に行かぬ処もあるが、そんな事はどうとも出来る。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
六つ七つのとき流行はやりの時疫にふた親みななくなりしに、欠唇いぐちにていとみにくかりければ、かへりみるものなくほとほとうえに迫りしが、ある日麺包パンの乾きたるやあると、この城へもとめに来ぬ。
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
俺も外の奴には恐い顔をして随分啖付くらひつきさうな素振をして嚇かしたが、此正直な神野霜兵衛さんには何時でも尻尾しつぽを掉つて愛想をしたから、一度は麺包パンのお土産を頂戴したことがあつた。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
劫盜は旅人をねらふのみにて、牧者の家などへは來ることなしとぞ。食は葱、麺包パンなどなり。皆うまし。されど一間にのみ籠り居らんこと物憂きに堪へねば、媼は我を慰めんとて、戸の前に小溝を掘りたり。
牛乳一合、麺包パンすこし。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)