骨髄こつずい)” の例文
旧字:骨髓
御友情のほど、骨髄こつずいに徹するほど、ありがたく思います。お礼のことばもない。ただこの上は、幸いに、なお生きることを得た生命を
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
師の教えのありがたさは骨髄こつずいに徹して感じられたが、それでもなおどこか釈然としないものを残したまま、悟浄は、師のもとを辞した。
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)
「工夫とては更にござりませぬ、ただこの太刀先につかこぶしも我が身も魂も打込めて、彼が骨髄こつずいを突きく覚悟でござります」
と言うのは、夢中ながら、男を斬った心持が、骨髄こつずいに徹して忘れられん。……思い出すと、何とも言えず、肉が動く、血汐ちしおく、筋が離れる。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「三ごく干渉かんしょう遼東りょうとう還附かんぷ以来いらいうら骨髄こつずいてっしているんだ。理窟も糸瓜へちまもあるものか?」
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
当たった時は驚いたものの、それほどでもないと思っていたのが、だんだん時をるに連れて骨髄こつずいに透って耐え難い。彼はとうとう唸り出した。いかに勇士と云ったところで前髪立ちのまだ若衆。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
俊寛 わしのこの、この骨髄こつずいてっするうらみをどうするのだ。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
与七が怨み骨髄こつずいに徹するのはそのためだったのです。
同時に、お通に対しての、飽くなきおばばが迫害を、骨髄こつずいから憎んで、忘れかけていた数々の口惜しさまでを新たに思い出した。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
匈奴きょうど右校王うこうおうたる李陵りりょうの心はいまだにハッキリしない。母妻子を族滅ぞくめつされたうらみは骨髄こつずいに徹しているものの、みずから兵を率いて漢と戦うことができないのは、先ごろの経験で明らかである。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
と赤羽君は腕まくりをした。うらみ骨髄こつずいに徹している。
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
いま誓約を捨てて悲境の彼を攻めても、もしなお、彼がよくここを生き抜くときは、骨髄こつずいのうらみをもって、将来長くわれをあだするに至ろう。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
うらみ骨髄こつずいに徹しているね」
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
見ると空の黒鷲くろわし、そのつばさにひそんでいるのは、呂宋兵衛がうらみ骨髄こつずいにてっしている鞍馬くらま小童こわっぱ丹羽昌仙にわしょうせんはきッと見て
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いかんせん、やじりにも槍にも、毒が塗ってあったようです。毒が骨髄こつずいにしみとおっていなければよろしいが……?」
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのときの織田方の仕方を、ゆるすべからざる不信義、また無情なりとして、以来、原平内の信長にたいする恨みというものは骨髄こつずいに徹していたのである。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その権柄けんぺいや無情なしもとが、身の皮に肉に骨髄こつずいに、どういう味がするものか、路傍の犬が人の手の小石を見るときのように、さんざん知って来ているからであった。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして織田の将士に、強い敵愾心てきがいしんと多年の訓練とを、骨髄こつずいにまで、植えこんでおいてくれたものである。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
という謙信の信条が、全家中の骨髄こつずいきざみこまれていた。火の玉のような一団の信念になっていた。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「けれど、それは、調和、調味というもの。骨髄こつずいには、独自のものを、生まねば、絵師とはいえぬ」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
骨髄こつずいから滲み出して面にたたえる彼への憎悪と、警戒と、そして忘れ難い怨みに燃える眼は、到底、不死人がいたずらに努めている煽動の眼などとは比較にならないものである。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「知れたものだ。彼らは筑紫武者の骨髄こつずいを知っていない。来れば思い知らせてやる」
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「わかりました。野郎には、遺恨骨髄こつずい、どうでも、そういうことにいたしましょう」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
関ヶ原から村へ帰った後にうけた仕打しうちの憎さは、いちいち骨髄こつずいに徹しているが、由来この婆には、勝てないものという幼い時からの癖がついているので、時経ときたてば、あの時の無念さも
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
血はながれて白髯に染み、肉はやぶれて骨髄こつずいくだけたろうと思われた。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
顔を見ると、骨髄こつずいに抑えているものが、むらっと、うごいて来る。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は官兵衛のぼうぼうたる髯やこけ落ちた頬に悲しむのではなく、その心中にかされるのであった。武門の信義を守りとおすことの並々ならぬものを同じ武門の将として骨髄こつずいから思い知るのだった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もとより骨髄こつずいに徹する恨みを、はらさんがためでござる。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)