革足袋かわたび)” の例文
そして、底知れぬ獰猛どうもうさを雪白の毛並みにうねらせた。だのに又太郎は、われから革足袋かわたびの片方を上げて、彼の鼻ヅラへ見せている。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もっとも足には革足袋かわたび穿き手には山刀を握っていた。その子供と大熊とは素晴らしい勢いで格闘した。そうして子供は熊を仕止めた。仕止めると一緒に気絶した
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
因みに、その時同人は新しき革足袋かわたびを穿き、古きメルトン製の釜形帽を冠りおりたる由……おわり……
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
縁には毛氈もうせんを敷いて煙草盆などが出してあり、世界が違ったように、ここは外套がいとうやら、洋服やら、束髪やら、腰に瓢箪ひょうたんを提げた、絹のぱっち革足袋かわたびの老人も居て、大分だいぶんの人出。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
革足袋かわたびの昔は紅葉み分けたり 一鉄いってつ
古池の句の弁 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
「はははは。許す、許す。もう顔を上げい。——いや待て待て、革足袋かわたびひもが解けておる。権六、ついでに結んでくりゃれ」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし老人はビクともせず、悠然ゆうぜんと正面へ突っ立ったが、ししの皮の袖無しに、くず織りの山袴、一尺ばかりの脇差しを帯び、革足袋かわたび穿いた有様は、粗野ではあるが威厳あり、あなどり難く思われた。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
年ばえ二十四、五歳、若いが、革足袋かわたびの先から髪の毛まで、一見して、のうもなく育って来た骨がらでないものを備えていた。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また、当時の武者輩も、革足袋かわたび、武者わらんじで湖沼を跋渉ばっしょうしたりした後など、足に水むしを病む者が多かったが、それにもよく灸は用いられた。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
泥田を踏んで来たような草履ぞうり革足袋かわたび。うるしのはげた烏帽子えぼしは、すこしはすかいに乗っかっている。背丈はずんぐり短かく、かた肥りという体躯からだだ。
追い立てて、彼の荷物や笠を自分で持ち、叔父の革足袋かわたびと、一そくの草鞋を裏口へ置いてくれた。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
袖無そでなし羽織を着、小桜の革足袋かわたびに新しい藁草履わらぞうりをはき、鮫柄さめづかの小脇差を一つ横たえて、武士とも町人ともみえず、ただ何処やらゆかしげな風格のある人が、竹箒たけぼうきを持って——ふと
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
黒い顎髯あごひげを蓄え、肩の幅、胸幅も、常人よりずっと広くて、背も高い。革足袋かわたびに草履穿きのその足の運びが、いかにも確かに大地を踏んでいるというように見えて立派である。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おもてを上げい」泥土によごれた革足袋かわたびが、曲者の肩を蹴った。曲者は横に倒れたが、すぐに坐り直して、剛毅ごうきな態度をとった。しかし俯向うつむいたきりで、顔を見せないのである。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
総髪そうはつにして野袴のばかまに草色の革足袋かわたびをはき、汗をこすりこすり近づいてくる。浪宅は本所中之郷なかのごうという事だから、そこからここまでは近い道程みちのりではない。かくしゃくとしているのだ。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いま彼女たちがおどしだにでつくっている、具足ぐそくまく旗差物はたさしものや、あるいは革足袋かわたび太刀金具たちかなぐ刺繍ししゅう染物そめものなどの陣用具じんようぐは、すべてそれ小太郎山こたろうざんのとりでへおくるべきうつくしい奉仕ほうしだった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
革足袋かわたびにわらじ穿きだし、どこといって抑えどころもないが、歴乎れっきとした藩臣でなく、牢人の境界きょうがいであることは、こういう船旅において、ほかの山伏だの傀儡師くぐつしだの、乞食のようなボロ侍だの
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いきなり革足袋かわたびのままとびおりた轟又八とどろきまたはち竹童ちくどうえりがみをおさえて
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
武蔵は入念に、わらじの緒のよりを調べて、革足袋かわたびのうえに穿いた。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
革足袋かわたびで、空地の土を踏んで歩きながら、彼は講義口調でいう。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
革足袋かわたびのまま石井戸の側まで駈け出して
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
侍とみえ、革足袋かわたび穿いて。
死んだ千鳥 (新字新仮名) / 吉川英治(著)