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革紐
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かはひも
汝の願ひの一部は
滿つべし、そは汝
削られし木を見、何故に
革紐を
纏ふ者が「迷はずばよく
肥ゆるところ」と 一三六—一三八
欣之介のゐる
離家の横手にある
灰汁柴の枝々の
先端へ小さな粒々の白い花が咲き出した頃の或る日暮方、
革紐で堅く
結へた白いズックの
鞄が一つ、その灰汁柴の
藪蔭に置いてあつた。
麦稈帽を
鷲掴みに
持添へて、
膝までの
靴足袋に、
革紐を
堅くかゞつて、
赤靴で、
少々抜衣紋に
背筋を
膨らまして——
別れとなればお
互に、
峠の
岐路に
悄乎と
立つたのには——
汽車から
溢れて
定刻になつて、代助は
出掛けた。
足駄穿で
雨傘を
提げて電車に
乗つたが、一方の
窓が
締め
切つてある
上に、
革紐にぶら
下がつてゐる
人が一杯なので、しばらくすると
胸がむかついて、
頭が
重くなつた。