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遠淺
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とほあさ
夕張炭山線の分岐點なる追分を過ぎ、
安平、
早來、
遠淺など云ふ驛を經て、
膽振の沼の端に至つて、一行は汽車を降りた。
和歌の
浦に
潮がさして
來ると、
遠淺の
海の
干潟がなくなるために、ずっと
海岸近くに
葦の
生えてゐるところをめがけて、
鶴が
鳴いて
渡つて
來る。
たとひ
海岸線が
直線に
近くとも、
遠淺だけの
關係で、
波の
高さが
數倍の
程度に
増すこともあるから、もし
沖合に
於ける
高さが
數尺のものであつたならば
碧水金砂、
晝の
趣とは
違つて、
靈山ヶ
崎の
突端と
小坪の
濱でおしまはした
遠淺は、
暗黒の
色を
帶び、
伊豆の
七島も
見ゆるといふ
蒼海原は、さゝ
濁に
濁つて、
果なくおつかぶさつたやうに
堆い
水面は
屡海底の
大地震を
起す
場所に
接し、そこに
向つて
大きく
漏斗形に
開いた
地形の
港灣がそれに
當るわけであるが、これに
次いで
多少の
注意を
拂ふべきは、
遠淺の
海岸である。