近付ちかづき)” の例文
美禰子は此夏自分の親戚が入院してゐた時近付ちかづきになつた看護婦をたづねればたづねるのだが、これは必要でも何でもないのださうだ。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
一 みこかんなぎなどの事に迷て神仏を汚し近付ちかづきみだりいのるべからず。只人間の勤をよくする時は祷らず迚も神仏は守り給ふべし。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
始め若い者女子迄七八人近付ちかづきならんと惣纒頭そうばなうち江戸町一丁目玉屋内たまやうち初瀬留はせとめと云ふ娼妓おひらんあげほどなく妓樓ぢよろやともなはれ陽氣やうき酒宴しゆえんとこへ入りしが六之助は夫よりさき初瀬留を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あなたのお父さまのムシュー・マネットと同じように、その紳士もパリーでなかなか評判の人でした。わたしがそのかたとお近付ちかづきになりましたのはそのパリーだったのです。
饗す兎も角もこゝ書入かきいれの名所なり俗境なりとてさて止むべきかは一杯酌みて浦嶋殿の近付ちかづきとならんと上の旅人宿はたごやへいそぎさけさかなを持來れと命じそれより寺内を漫歩そゞろあるきしまた川を眺むるに流を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
森「そうじゃアねえ、旦那がお前に近付ちかづきに来たのだよ」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
いとはずたどり行に漸々と紀州加田浦かだのうらいたる頃は夜はほの/″\と明掛あけかゝりたり寶澤は一休ひとやすみせんと傍の石にこし打掛うちかけ暫く休みながらむかうを見れば白きいぬぴき臥居ふしゐたり寶澤は近付ちかづき彼の握飯にぎりめし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
姉が息苦しくって、受答えが出来かねるので、脊中せなかさすっていた女が一口ごとに適宜な挨拶あいさつをした。平生へいぜい健三よりは親しくそのうち出入でいりする兄は、見馴みなれないこの女とも近付ちかづきと見えた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
代助の右隣みぎどなりには自分と同年輩の男が丸髷にいつた美くしい細君を連れててゐた。代助は其細君の横顔を見て、自分の近付ちかづきのある芸者によく似てゐると思つた。左隣ひだりどなりには男づれ四人許よつたりばかりゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ぎ屋敷に近付ちかづき一同に表門へ懸り小石川御館の御使者ししや山野邊主税之助なり開門かいもんあるべしと呼はれば夜番の御徒士目附こたへて越前守には閉門中へいもんちうにて開門かなひ申さずといふ主税之助越前殿閉門は誰より申付候やと尋ぬるに御徒士目附申やう土屋つちや六郎兵衞殿の申付なりと此時このとき主税之助わざいかりの聲を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)