輿)” の例文
その人びとの中には輿に乗る者もあれば、きょうに乗る者もあり、また馬やろばに乗る者もあり、舟で往く者もあった。
雷峯塔物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
台州たいしうから天台縣てんだいけんまでは六十はんほどである。日本にほんの六はんほどである。ゆる/\輿かせてたので、けんから役人やくにんむかへにたのにつたとき、もうひるぎてゐた。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
あんな何でもない、つまらん事件だもの、それ以上になりっこはないという、被告らの輿論だった。ところが意外にも、判決申し渡しは一年、一年半、二年の三種だった。
赤旗事件の回顧 (新字新仮名) / 堺利彦(著)
長沮ちょうそ桀溺けつできならびて耕す。孔子之をぎり、子路をしてしんを問わしむ。長沮曰く、輿を執る者は誰と為すと。子路曰く、孔丘と為すと。曰く、是れ魯の孔丘かと。曰く、是なりと。
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
ワレ病ヲ輿シテ帰ラント。先生遂ニ病ヲ尾ノ丹羽ノ里ニ養フ。寛政戊午ぼごノ冬十月十七日家ニ終ル。年ヲ受クルコト七十有三。同月二十日日待塚ひまちづかノ松林ノ中ニ葬ル。墳ハ高四尺ひそか馬鬣封ばりょうほうニ擬ス。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
その人々の中には輿に乗る者もあれば、きょうに乗る者もあり、また馬やろばに乗る者もあり、舟で往く者もあった。
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
みち出合であ老幼らうえうは、みな輿けてひざまづく。輿なかではりよがひどく心持こゝろもちになつてゐる。牧民ぼくみんしよくにゐて賢者けんしやれいするとふのが、手柄てがらのやうにおもはれて、りよ滿足まんぞくあたへるのである。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
椒江しょうこうの支流で、始豊渓しほうけいという川の左岸を迂回しつつ北へ進んで行く。初めくもっていた空がようよう晴れて、蒼白あおじろい日が岸の紅葉もみじを照している。みちで出合う老幼は、皆輿を避けてひざまずく。
寒山拾得 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
閭は衣服を改め輿に乗って、台州の官舍を出た。従者が数十人ある。
寒山拾得 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
りよ衣服いふくあらた輿つて、台州たいしう官舍くわんしやた。從者じゆうしやすうにんある。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)