豹変ひょうへん)” の例文
「しかし、朝倉先生の豹変ぶりは、とにかくおかしいよ。あれじゃあ、先生がいつも言っていた信念なんて、あやしいものだね。」
次郎物語:04 第四部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
「そんなになら強いてとまでは云いませんが、そう二三時間のうちに、特別の理由もないのに豹変しちゃ、将来君の信用にかかわる」
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
私は道雄の豹変を責めるよりも、丈五郎の暴虐を恨むよりも、形容の出来ない悲愁に打たれて、胸の中が空虚になった感じだった。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
何が僕を一朝にして豹変せしめたか、そのキッカケは、大学三年のときに、省線電車「信濃町」駅の階段を守ったという一事件に発する。
階段 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「わかった、きさまの豹変は、正成にたぶらかされたものだろう。ことば巧みに、正成に魅せられ、出世の夢でもみているか」
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、お前という人柄がきょうこのごろのように豹変した以上は、拙者としては嫌でもお前の変心を認めざるを得ない。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「出鱈目は、天才の特質のひとつだと言われていますけれど。その瞬間瞬間の真実だけを言うのです。豹変という言葉がありますね。わるくいえばオポチュニストです。」
彼は昔の彼ならず (新字新仮名) / 太宰治(著)
彼はせめて言葉附だけでもいかつく、ませたものにしようと骨を折った。彼の取って付けたような豹変の態度に、弱いものはえて敬遠し出した。強いものは反撥してった。
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
それというのも、あれほど瑠美子を手懐けていた清川も、同棲生活が初まるとたちまち態度が豹変して来たからで、それも彼ら二人の恋愛生活に幻滅を促した一つの原因であった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
彼がどうこれから豹変するかは知らない。寧ろ又私を立ち所に裏切るには違いない。
光の中に (新字新仮名) / 金史良(著)
話は少々長いが、私が金銭の事に付き数年の間に豹変したその由来を語りましょう。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
劣らずに口では小侍たち、猛りつづけてはいたが、十五郎の思わざる豹変にいささかじ気づいたらしい容子でした。真赤な髑髏首もこの際この場合、相当に六人の肝を冷やしていると見えるのです。
その豹変だしいには私もれたです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
ここに、たちまち豹変しはじめたのは、同盟国の呉であった。その態度は、孔明の死と同時に、露骨なものがあった。
三国志:12 篇外余録 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
馬鹿にするない冗談じゃねえという発憤の結果が怪物のように辣腕な器械力と豹変したのだと見れば差支ないでしょう。
現代日本の開化 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
某大国はいちはやく態度を豹変し、内面はともかくも表面的には中国に対する同情をひっこめ、そしてひたすら日本の御機嫌をとりむすぶように変った。
東京要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
女学校の寮から出て、また父の実家に舞いもどって、とたんに、さちよは豹変していた。
火の鳥 (新字新仮名) / 太宰治(著)
今度の新政府は開国に豹変した様子で立派な命令は出たけれども、開国の名義中、鎖攘タップリ、何が何やら少しも信ずるに足らず、東西南北れを見ても共に語るべき人は一人もなし
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
豹変して私をて(というと、二人の間に何かいまわしい関係でも出来ていたようだが、決してそんなことはない)木崎初代に対して求婚運動を始めたのであるから全く「突然」に相違ないのである。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
刹那! 下総男、すさまじい豹変でした。
和睦成っての引き揚げとはいえ、秘中の秘はなおつつまれている。ひとたび彼に豹変があろうと、その責めは秘を包んでなした秀吉に帰さねばならない。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
帝国主義に豹変し、今では、昔のスローガンとはまるで反対なものを掲げ、ことにイネ州においては、行政官は極度の資本主義的趣味にっているのであった。
二、〇〇〇年戦争 (新字新仮名) / 海野十三(著)
わざわざ鰹節を買い込んで、これでパリーの下宿に籠城するなんて大いばりだったが、パリーへ着くやいなや、たちまち豹変したそうですねって笑うんだから始末がわるい。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
日本の明治以来の自由思想も、はじめは幕府に反抗し、それから藩閥を糾弾し、次に官僚を攻撃している。君子は豹変するという孔子の言葉も、こんなところを言っているのではないかと思う。
パンドラの匣 (新字新仮名) / 太宰治(著)
とはいえ勿論、山といえばがある。谷がある。信長の気難しさや、測り知れない豹変や、癇癖や我儘や、ずいぶん人間的な短所は官兵衛も承知である。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
瑣談繊話と思ってうっかりと読んでいたものが忽然豹変して容易ならざる法語となるんだから、決して寝ころんだり、足を出して五行ごとに一度に読むのだなどと云う無礼を演じてはいけない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
愛知川の夜も今も、道誉に変りはございません。もし、豹変のできる道誉なれば、執権の御奉書をかさに、誇りこそすれ、何条、気の弱さなど見せて姿を
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いつの間にこう豹変したのか分らないが、全く矛盾してしまいました。
文芸の哲学的基礎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
これまでも、何度となく豹変してはまた持ち直して来た友情ではあるが、今度は今までの憎悪に輪をかけて
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
従って緒論に現われた先生は、出来得る限りの範囲において、われらが最近五十年間の豹変に対する説明を、箇条がきの如くに与えておられる。その内にはちょっとわれらの思い設けぬ解釈さえある。
むき出しに見せられた人間の奥底のものに、わけて娘婿の豹変に、いいようのない顔いろではあったが
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
伝五の報告で、筒井の変節はもうあきらかだったが、なお順慶の余りなる豹変ぶりには、ここでも諸将の憤りのたねとなって、武門の風上にも置けぬ男とられていた。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひとたびは秀吉の陣門に詫証文を入れた神戸信孝の美濃勢力も「勝家南下す」と知れば立ちどころに豹変して、これまた一益と共に厄介な火の手となることは容易に予想がつく。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ですから、都へ行ったため、にわかに豹変したものとも、二心あるものともいえませぬ。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いや主君の好色は驚くに足りないが、その豹変ぶりには、ただあきれるばかりなのだ。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まず毛利に豹変はないとほっとした容子に見える。しかしなお油断はできなかった。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
よもや? ——とは思うものの、そう思われない人間がよく事の間隙豹変する。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、鎌倉表における宗家の道誉の豹変や、幕命の一端などを、かたりかけ
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼が弟の豹変を知ったのは、備前福岡城にいたときだった。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たちまちの豹変も恥じなかった。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)