だに)” の例文
たび途中とちゅうで、煙草畑たばこばたけに葉をつんでいる少女にった。少女はついこのあいだ、おどしだにからさとへ帰ってきた胡蝶陣こちょうじんのなかのひとり。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
平地なら装甲車はどんどん走れるが、ここはトロイだにである。道はでこぼこしている上、どっちへ走ってもすぐがけにつきあたりそうになる。
三十年後の世界 (新字新仮名) / 海野十三(著)
大橋を渡り、橋場というところを過ぎて、くだだににかかった。歩けば歩くほど新生活のかどでにあるような、ある意識が彼の内部なかにさめて行った。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
二千余町歩の大樹林にて、その内にひらだにとて、熊野植物の模範品多く生ぜる八十町長しという幽谷あり。
神社合祀に関する意見 (新字新仮名) / 南方熊楠(著)
鷹匠町というのは、これからうぐいすだにへ出て、松平讃岐守まつだいらさぬきのかみさまのお下屋敷を迂回うかいして裏手へまわったそのへん一円の、御家人などの多く住んでいる一区劃であった。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
道はじゃだにを経て東山の峰を分け、滑石峠すべりいしとうげにかかって山科へ下りるのであります。峠の見晴らしは素晴らしいのです。この峠を少し下った処に山桐やまぎりの大木が一本つっ立っています。
蝶が飛ぶ 葉っぱが飛ぶ (新字新仮名) / 河井寛次郎(著)
継承した東京市中各処の地名には少しく低い土地には千仭せんじんの幽谷を見るやうに地獄谷ぢごくだに(麹町にあり)千日谷せんにちだに(四谷鮫ヶ橋に在り)我善坊がぜんばうだに(麻布に在り)なぞいふ名がつけられ
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
馬追うまおだにのやぶ薔薇は大へんいぢ悪だつてことだが、ほんたうだらうか。」
虹猫と木精 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
千々和灘ちぢわなだにむかひて低くいくだにいきづくごとし山のうねりは
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
この渓谷けいこくの水が染物そめものによくてきし、ここの温度おんどかわづくりによいせいだというか、とにかく、おどしだに開闢かいびゃくは、信玄以来しんげんいらいのことである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
トロイだにへ向ったのは、マルモ探検隊長のひきいる二十五名の隊員で、九台の装甲車にのっていた。
三十年後の世界 (新字新仮名) / 海野十三(著)
継承した東京市中各処の地名には少しく低い土地には千仭せんじんの幽谷を見るように地獄谷じごくだに(麹町にあり)千日谷せんにちだに(四谷鮫ヶ橋にあり)我善坊がぜんぼうだに(麻布にあり)なぞいう名がつけられ
そこへまた、このあいだ城外へ出て行った浄信寺じょうしんじ雄山ゆうざんが、まがだにの奥から、わざわざ人夫に石塔せきとうを負わせて、帰って来た。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一同は前のとおり装甲車に分乗し、急いでトロイだにをはなれた。
三十年後の世界 (新字新仮名) / 海野十三(著)
おどしだに山間さんかんから、かわるがわるに手車てぐるまんで竹童ちくどうを助けだしてきた少女たちは、その松原の横へはいって、しきりと彼を看護かんごしていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「はしなく、途中の三まいだにで、行き会うたのでおざりました。——こなたへ降って来る御舎弟ごしゃていと、若者ばらに」
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
噂によれば、僧正そうじょうだにや、貴船きぶね里人さとびとどもも、もてあましている暴れン坊とか
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)