ものがたり)” の例文
大蛇おろちの怪異という角書つのがきをつけて「児雷也豪傑ものがたり」という草双紙を芝神明前の和泉いずみ屋から出すと、これが果して大当りに当った。
自来也の話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
つまりこの如月寺にょげつじの縁起ものがたりの前に起った出来事で、今からおよそ一千百年前の大昔から初まった呉一郎の心理遺伝のソモソモが書いてあるんだが
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
さる継母に養わるる姉上の身の思わるるに、いい知らず悲しくなりて、かくはわれ小銀のものがたりに泣きしなる。その理由いわれを語るべき我が舌は余りおさなかりき。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それはほたるか何かであろう。彼はかつ支那しなの随筆の中で読んだことのある蛍に関する怪奇なものがたりを思いだした。
馬の顔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
されど作者蒲松齢ほしようれいが、満洲朝廷にいさぎよからざるの余り、牛鬼蛇神ぎうきだしんものがたりに託して、宮掖きゆうえきの隠微を諷したるは、往々本邦の読者の為に、看過かんくわせらるるのうらみなきに非ず。
ところが、まだ後日ものがたりがあるのですよ。……その日、私は家へ帰ってから、つくづく考えたのです。
ある恋の話 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
ネクラーソフはロシア民族的な詩ものがたりの伝統をこの詩に新しい価値で生かしていると思いました。
私は何を読むか (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
ところでこのリュデスハイムものがたりは、別に引証されてはいないけれども、メールヒェンの『朦朧状態デームメル・シュテンデ』を読むと、詩で唱われたオスワルドの喪神状態が、それには科学的に説明されている。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
古戯曲の百合若ゆりわかものがたりは、南蛮僧などが、古ギリシアのウリッセスの譚を将来したのを、日本の事のように作り替えたてふ論を出されたと聞いたが、いまだに手に入らぬからその論を拝読せぬ。
「心臓捕りの」物語は、すなわち以上これで終りである。人工の巨人の運命や、博士と看護婦との成行や、本田捨松の其後に就いては、機会おりを見ていずれ語ることにしよう。要するに夫れは後日ものがたりである。
人間製造 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あの大資産を一朝にひっくりかえした後日ものがたりの主人公となったのも、叶屋かのうや歌吉という、子まである年増としま芸妓と心中した商家の主人の二人の遺子が、その母と共に新橋に吉田屋という芸妓屋をはじめ
明治大正美人追憶 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
もかくもの「田舎源氏」や「しらぬいものがたり」や「釈迦八相」などと相ならんで、江戸時代における草双紙中の大物と云わなければならない。
自来也の話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
明確な事実ものがたりかということは、話の進行に連れて、追々おいおいとおわかりになる事と思いますからね。
キチガイ地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
数人の怪異ものがたりがすむと、背広服を着た肥った男があがった。それは万朝報まんちょうほうの記者であった。
怪談会の怪異 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
此の時、木下藤吉郎承って殿しんがりを勤めた。金ヶ崎殿軍として太閣出世ものがたりの一頁である。
姉川合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
印度インド、日本等に於て屍神ししん屍鬼しき、もしくは火車かしゃ等と称する妖異ものがたりの内容を検する時は、この種の夢遊行為……すなわち屍体飜弄が誤伝せられたるものなる事を、自然科学
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それは例の種員たねかずの「しらぬひものがたり」で、どの人も生れてから殆ど一度も草双紙などを手に取ったこともない人達なので、その面白さに我を忘れて、皆うっとりと聴き惚れていました。
三浦老人昔話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
喜多村緑郎ろくろう、鈴木鼓村こそん、市川猿之助、松崎天民などで、蓮の葉に白い強飯こわめしを乗せて出し、灯明は電灯を消して盆燈籠をけ、一方に高座を設けて、ものがたりをする者は皆その高座にあがった。
怪談会の怪異 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
処々にいんんであったり、熟字の使い方や何かが日本人離れをしているところなぞを見ると、やっぱりその名付親の勃海使が芬夫人のものがたりに感激して、船中の徒然つれづれに文案を作ってやったのを
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)