角燈かくとう)” の例文
新字:角灯
今度のは巡査が持っているような角燈かくとうで、だんだんに両方が近寄ると、片手にその火を持って、片手は長い釣竿を持っているのは……。
水鬼 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
睦田むつだ老巡査はフト立ち止まって足下あしもとを見た。黄色い角燈かくとうの光りの輪の中に、何やらキラリと黄金色きんいろに光るものが落ちていたからであった。
老巡査 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
この海戦の始まる前夜、彼は甲板かんぱんを歩いているうちにかすかな角燈かくとうの光を見つけ、そっとそこへ歩いて行った。
三つの窓 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ゆきはいよ/\つもるともむべき氣色けしきすこしもえず往來ゆきゝ到底とてもなきことかと落膽らくたんみゝうれしや足音あしおとかたじけなしとかへりみれば角燈かくとうひかゆきえい巡囘じゆんくわい査公さこうあやしげに
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
窟外くつぐわいからは、角燈かくとう蝋燭らふそくなんど、點火てんくわして、和田わだ大野おほの水谷みづたにといふ順序じゆんじよ入來いりきたつた。
それも燈火あかりがなくては水上の巡廻船にとがめられる恐れがありますから、漁師が夜網よあみなど打ちにまいるとき使う、巡査おまわりさんが持っていらっしゃる角燈かくとうのようなものまで注意して持ってきているから
今や角燈かくとうの火にてらいだされたる、の暗い空屋あきやの内の光景は惨憺さんたん、実に眼も当てられぬものであった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
が、二人は何時いつまでも泣いている場合でなかった。追手おっては美濃屋の庭を探しつくして、更に両隣をあさり始めた。人の声が漸次しだいちかづいた。警官の角燈かくとうが雪に映じて閃いた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
かれらの悲鳴を聞いて駈け付けたらしい、わたしに続いて巡査の角燈かくとうの光りがここへ近寄った。
深見夫人の死 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
けれども、あくまで不運なる彼はここで又もや強敵に逢った。巡回中の塚田巡査があたかもここへ来合きあわせて、角燈かくとうの火をの鼻の先へ突付つきつけたのである。重太郎もこれには少しくひるんだ。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
月はないが、星の明るい夜で、田圃たんぼを縫って大勢が振り照らしてゆく角燈かくとうのひかりが狐火のように乱れて見えた。ゆうべの疲れがあるので、僕の家ではみんな早く寝てしまった。
こま犬 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)