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藥屋
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くすりや
神田猿樂町で、
幌のまゝ
打倒れた、ヌツと
這出る
事は
出たが、
氣つけの
賓丹を
買ふつもりで
藥屋と
間違へて
汁粉屋へ
入つた、
大分茫としたに
違ひない、が
怪我なし。
藥屋が
主の
寫眞材料店、名
刺形の
乾板の
半ダース、
現像液に
定着
液、
皿、赤色
燈、それだけは
懇願の
末、
祖母から
資金を
貰つたのだつたが、
胸を
躍らせながら、
押入へもぐり
込んで
乾板を
裝置して
飮で居る處へ二丁目の番人作兵衞といふ者來り
四方山の
咄の中此
匂を
嗅ぎ不審に思ひながら歸ると程なく
定廻りの
同心來りて行事を
呼寄名香紛失につき内々の御
調べゆゑ
藥屋共へ吟味致す樣申付るを
女中の
方は、
前通りの
八百屋へ
行くのだつたが、
下六番町から、
通へ
出る
藥屋の
前で、ふと、
左斜の
通の
向側を
見ると、
其處へ
來掛つた
羅の
盛裝した
若い
奧さんの