落語はなし)” の例文
「そんなら、斯うしまほ。寄席へ入つてな、わて落語はなし聞いてるよつて、其の間おまはん、そこで寝なはい。はねたら起したるよつて。」
世の中へ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
このたびはソノ三題話さんだいばなし流行はやつた時分じぶん出来できました落語はなしで、第一が大仏餅だいぶつもち、次が袴着はかまぎいはひ乞食こつじき、と三題話さんだいばなしを、掲載すことにいたしました。
三人は落語はなしの『おせつ』に出て来るので知っている一九いっくの碑のまえに立った。——おもわず歎息するように田代はいった。
春泥 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
「他あやん、もっとほかの話してんか。ベンゲットの話ばっかしや。〆さんの落語はなしの方がよっぽどおもろいぜ」
わが町 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
むしろ落語はなしに、芸に、ひとしお身を打ち込めばこそのきょうこのごろの耐えがたい不満ではあったのだった。
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
落語はなしか。落語はすきで、よく牛込の肴町さかなまち和良店わらだなへ聞きにでかけたもんだ。僕はどちらかといえば子供の時分には講釈がすきで、東京中の講釈の寄席よせはたいてい聞きに回った。
僕の昔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いつか小歌が落語はなしが面白いと云ったことをおもい出して、必定ひつじょうそれと自分もうか/\寄席へ這入り、坐を定めかねて立って居た今の両人ふたりの前へ廻って見ると、似ても似つかぬ三十近い薄痘痕うすあばた
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
人いきれとたばこで、むっとする空気の向うに、高座の、ちょうど落語はなし家の坐る、左右に、脚の長いついの燭台の灯が、薄暗く揺れて、観客のぎっしり詰まった場内を、影の多いものに見せていた。
釘抜藤吉捕物覚書:11 影人形 (新字新仮名) / 林不忘(著)
なんという落語はなしだったか忘れたが、文楽がうまい。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これは自分のうちが色物の寄席のまえで、毎晩定連じょうれんの格で遊びに行っていたものですから、いろいろ八さんや熊さんの出て来る落語はなしにくわしいのでした。
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
それゆゑだれかれききまゐなかに、可楽からくふ者があつて、これ櫛職人くししよくにんでござりましたが、いたつ口軽くちがる面白おもしろい人ゆゑ、わたくしも一つ飛入とびいり落語はなしをして見たいと申込まうしこんだ。
落語の濫觴 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
そうしてそこにうそのように五十という落語はなしの数が、僅かの間に圓朝の頭の中に収められてしまった。
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
「ええか。この落語はなしはな、無筆の片棒いうてな、わいや他あやんみたいな学のないもんが、広告のチラシもろて、誰も読めんもんやさかい、往生して、次へ次へ廻すいうおもろい話やぜ。さあ、笑いんかいな。」
わが町 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
成程なるほどと思つて当日たうじつつて見ると、幟等のぼりなどさかんに落語はなしくわいがあつたといふ。して見ると無理に衆人ひとかせよう、とわけでもなんでもなかつたのでござります。
落語の濫觴 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
それより圓太郎、私アお前に昨日越中島の養老院の年忘れに落語はなしをやってきておくれとお頼みしたンだよ。だのにお前、とんでもないところへ行っておしまいだったねェ。
円太郎馬車 (新字新仮名) / 正岡容(著)
なん落語はなし種子たねにでもなるであらうとぞんじまして、門内なか這入はいつて見ましたが、一かう汁粉店しるこやらしい結構かゝりがない、玄関正面げんくわんしやうめんには鞘形さやがたふすまたててありまして、欄間らんまにはやり薙刀なぎなたるゐかゝつ
士族の商法 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
じゃ一年間は、自分一人で、勝手に落語はなしを研究していよう。
寄席 (新字新仮名) / 正岡容(著)