落書らくがき)” の例文
その横に同じ墨色で二三の文字が落書らくがきしてある、その文字の字体から見ると、この可笑をかしな楽書は、徳川時代に幾度か行はれたらしい修繕当時の悪戯いたづらでは無く
見て其そで落書らくがきいたし候由其儀は只今兩人の者より申上候通りなり然るを私し不思議にも本學院の住職ぢうしよくより右樣の次第をうけたまはり及び候に付其以來それいらい種々いろ/\手をかへしな
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
これ等の宗教画がこの通り汚され、引裂かれ、落書らくがきさえされてあるのは、子供の悪戯や新教徒の頑迷からした仕事ではない。これはすこぶる念入りにやった仕事です。
曲りたるもの、すぐなるもの、心の趣くままに落書らくがきしたり。しかなせるあひだにも、頬のあたり先刻さきに毒虫の触れたらむと覚ゆるが、しきりにかゆければ、そでもてひまなくこすりぬ。
竜潭譚 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
それに汝は屋敷を出る時七軒町の曲り角で中根善之進を討って立退たちのいたるは汝に相違ない、其の方の常々持って居た落書らくがき扇子おうぎが落ちて居たから、たしかに其の方と知っては居れど
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
不良ふりやう少女せうぢよ沒落ぼつらく」といふ標題みだしもとに、私達わたしたち前後ぜんごしての結婚けつこんを×あたりに落書らくがきされてから、みなもうまるねんすごしました。Kさんがまづ母となり、あなたも間もなく母となりました。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
僕等は直接に芸術の中に居るのだから、へい落書らくがきなどに身を入れて見ることは無いよ。なるほど火の芸術と君は云うが、最後のるという一段だけが君の方は多いネ。ご覧に入れるには割が悪い。
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ええあの落書らくがきですか、つまらない事をしたもんで、せっかく奇麗な所を
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ゆえに折々かの石碑せきひの周囲に雑草がはびこって、見すぼらしくなりはせぬか、石が倒れて見る甲斐かいなきようになっておるまいか、悪戯いたずらの子供らが石の上に落書らくがきでもして不作法ぶさほうになってはおらぬかと
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
落書らくがき酒肆しゅし障子しょうじや秋の風 抱琴ほうきん
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
落書らくがきに恋しき君が名もありて おう
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
私が改めてお頼み申す訳ではないが、山平殿、中根善之進殿を討ったは水司又市と私は考える、の日逐電して行方知れず、落書らくがきだらけの扇子おうぎが善之進殿の死骸の側に落ちて有ったが
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
看護員はやや俯向うつむきつ。手なる鉛筆のさきめて、筒服ズボンひざ落書らくがきしながら
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
なが何故いかにも道理もつともなる尋ねなり今日まで云ざりしがじつは其方事七年前藤川宿の町外まちはづれにすてて有しなり其時其方のたもと書付かきつけて有しは是なりと彼のそう落書らくがきまで殘り無物語に及びければ久八は子供心に我が身の上を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
落書らくがきの顔の大きく梅雨つゆへい
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
して居たる中上野の山内へ出入となり四軒寺町本覺院ほんがくゐんの住寺の贔屓ひいきあづかりたり此寺の和尚と云は彼の藤川宿にて先年棄子すてごそで落書らくがきなしたるそうなりしが或日吉兵衞へ行脚あんぎやせし頃の物語りより彼の藤川宿に於て棄子すてごそで落書らくがきなしたる事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)