かつ)” の例文
所の猟師よりももっと詳しく知り尽していたという事で……気が向くと夜よなかでもサッサと支度して、鉄砲をかついで出て行くので
復讐 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
標準に拘泥こうでいすることなかれ。手前勘の理想をかつぎまはることなかれ。嗜好しかうにあやまたるゝことなかれ。演繹的なることなかれ。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
四尺四方もある大きな早桶はやおけかついで、跡から龕灯がんどうを照しました武士さむらいが一人附きまして、頭巾面深まぶかにして眼ばかり出して、様子は分りませんがごた/\這入って来ました。
それから二人でベンチへ隣り合せに腰を掛けていると、だんだん停車場ステーションへ人が寄ってくる。大抵は田舎者いなかものである。中には長蔵さんのような袢天はんてんけんどてらを着た上に、天秤棒てんびんぼうさえかついだのがある。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いくらたたいても誰も来ないので、変に思って下へ降りて来ますと、大きな風呂敷包みをかついだ一人のお爺さんを捕まえて、みんなで
豚吉とヒョロ子 (新字新仮名) / 夢野久作三鳥山人(著)
森「来ました、驚きましたねえ、酒を一樽かついで来て旦那に上げてくれって来ました」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
頬冠りしたるの馬十、鍬をかつぎてわが居る方丈の背面うしろに来り、の梅の古木の根方を丸く輪形に耕して、豆のやうなる種子を蒔き居り。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
彼も記者と同じようにペンをかついだ職人で、都会カブレをしなければ飯の喰えない人種である……赤ゲットを尊敬は出来るが
それからもし運動会がなかった時の用心に昨日次の日の時間割に合わして本を詰めて置いた鞄をかついで、学校に行きました。
寝ぼけ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
私がここまでかついで来て解いて上げたのです……サアこれで私のお話はおしまいです。今度はあなたがお話しをなさる番です
オシャベリ姫 (新字新仮名) / 夢野久作かぐつちみどり(著)
一方、気が狂った紅木大臣は、濃紅こべに姫の死骸をかついだまま、一息に廊下をかけ抜けて、馬にも乗らず真一文字に、自分のうちに帰り着きました。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
そうすると、見るみるうちにリイの足は岩の上から離れて、刀と鉄砲をかついだまま月の世界の方へ飛んでゆきました。
奇妙な遠眼鏡 (新字新仮名) / 夢野久作香倶土三鳥(著)
……亜歴山アレキサンドル大王はアラビヤ人を亡ぼすために、黒死病患者の屍体をかついだ人夫を連れて行って、メッカの町の辻々でその人夫を一人ずつ斬倒きりたおさせた。
悪魔祈祷書 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
と云ううちに、袖をふり切って表に飛び出して、荷物をかついで車力を引きながらドンドン駈け出してゆきました。
豚吉とヒョロ子 (新字新仮名) / 夢野久作三鳥山人(著)
早くも起き出でし寺男とおぼしく、骨格逞ましく、全身にいれずみしたる中老人が竹箒をかつぎて本堂の前を浄め居り。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
自警団やその他のやり口にかぶれたものかどうか知らぬが、団体を組んで長い物をふりまわしたり、又は焼け残りの刀剣類をかついだりして喧嘩をしてまわった。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
と云いながら直ぐそばの石作りの門の中に這入ったが、やがて大きな袋とほうきを持って来てすっかり銀杏の葉をその中へんで、どこかへかついで行く様子である。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
そうしてそのまんま地びたの上にソッと寝かして、足の処をシッカリとハンカチでゆわえるとヤットコサとかつぎ上げながら、低い声でこんな事を云って聞かせたのよ。
支那米の袋 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
或る日のこと……思い出したように道具をかついで因幡町いなばちょうの恩師、浅川一柳斎の道場へ出かけた。
斬られたさに (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そのうちに美留女姫も一生懸命に走ってお爺さんに追い付いて、何をるかと思うと、ふところから小さなはさみを取り出して、お爺さんがかついで行く袋の底を少しばかり切り破った。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
あらん限りの苦労をした揚句あげく鉋飴かんなあめ売りの商売を覚えて、足高盥あしだかだらいかつぎ荷ぎ故郷へ帰って来たが、帰って来てみると故郷は皆死絶えたり零落してしまったりしてアトカタもない。
骸骨の黒穂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ところへ思いがけなく向うからざるを前後にかついだ卵売りに出会ったので呼止めて、二人で卵を買ってすすり始めたが、卵というものはイクラ空腹でも左程沢山に啜れるものでない。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
と鞄一パイのお土産をかつぎ込む中折れ……。こんな方々が如何に色男で才子で信用があっても、変態心理の所有者でない限りその心に残っている記憶の影を踏み消す訳に参りませぬ。
鼻の表現 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
山芋をドッサリかついだ亭主の金作が、思いがけなく早く、裏口から帰って来た。
いなか、の、じけん (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ちょっと、そのお前がかついでいる風呂敷包みの中の着物を見せてくれないか
豚吉とヒョロ子 (新字新仮名) / 夢野久作三鳥山人(著)