自他じた)” の例文
見廻しながら私しの年はたしか廿二歳ばかりにてつまは御座りましたが私しをきら此間このあひだ御出おでやりましたと自他じたも分らぬ事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
自他じたぶんあきらかにして二念にねんあることなく、理にも非にもただ徳川家の主公あるをしりて他を見ず、いかなる非運に際して辛苦しんくなむるもかつて落胆らくたんすることなく
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
なにをかこゝろむる、とあやしんで、おこみぎはつて、枯蘆かれあしくきごしに、ほりおもてみつめた雪枝ゆきえは、浮脂きらうへに、あきらかに自他じた優劣いうれつきぎけられたのを悟得さとりえて、おもはず……
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ところが一二ねん此方このかたまつた自他じた差違さゐ無頓着むとんぢやくになつて、自分じぶん自分じぶんやううまいたもの、さきさきやううんつてなかたもの、兩方共りやうはうともはじめから別種類べつしゆるゐ人間にんげんだから
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
かかるときにおいてはじめて芸術は人類に必需ひつじゅで、自他じた共に恵沢けいたくを与えられる仁術じんじゅつとなる。一時の人気や枝葉しようの美に戸惑とまどってはいけない。いっそやるなら、ここまで踏みることです。
巴里のむす子へ (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
かく打明うちあけるのが、この際自他じたのためと思ったから、高坂は親しくず語って、さて
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)