肥太こえふと)” の例文
見たりとも/\鬼にもさま/″\あり、青鬼赤鬼は常の事也、かほの白くてやさしきを白鬼といひ、黒くて肥太こえふとりたるを黒鬼といふ。
つかはす夫にて皆々不肖ふせう致せと白洲の外に控へ居たる一人の男を呼出よびいだされしに久しく日の目を見ざりしと見え顏色かほいろあしけれ共よく肥太こえふとりたりイザ此者を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
町奉行所へうったえ出たる事ありと、或る老人の話しなるが、それかあらぬかかく、食物を与えざるもなくこと無く、加之しかのみならず子供が肥太こえふとりて、無事に成長せしは、珍と云うべし。
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
自分の居間と私のうちの女中部屋とを、例のレンズと鏡で出来た、様々の形の暗箱を装置して、れた果物の様な肥太こえふとった、二十娘の秘密を、隙見してやろうと考えました。
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「おねがひだから、しづかにしてゐてくんな」とたのみました。しづかになつたやうでした。すると、こんどはあぶやつぎん手槍てやりでちくりちくりとところきらはず、肥太こえふとつたうしからだしはじめました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
産終うみをはるまでの困苦こんくのために尾鰭をひれそこなやせつかれ、ながれにしたがひてくだり深淵ふかきふちある所にいたればこゝにしづつかれやしなひ、もとのごとく肥太こえふとりてふたゝながれさかのぼる。
留守中一回もないた事が無く、しかも肥太こえふとりて丈夫に育つ事、あまりに不思議と、我も思えば人も思い、段々だんだん噂が高くなり、ついには母の亡霊きたりて、乳をのますのだと云うこと、大評判となり家主より
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
六尺以上の身長で、しかも角力すもう取みたいに肥太こえふとっているのだ。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
にははしらにもなるべき木を惜気をしげもなくたきたつる火影ほかげてらすを見れば、末のむすめは色黒いろくろ肥太こえふとりてみにくし。をり/\すそをまくりあげて虫をひらふは見ぐるしけれどはぢらふさまもせず。