美濃紙みのがみ)” の例文
美濃紙みのがみ八枚どり大に刷った大黒天像を二枚ひとつつみにし、しかるべき有縁無縁うえんむえん善男善女ぜんなんぜんにょの家にひそかに頒布はんぷするもので、添書そえがき
上から美濃紙みのがみを細く切つて卷いた上、立會つた人數だけで封印をし、其儘外の泥を拭いて佛壇の中に納め、ピタリと扉を閉めました。
整理がすんでから、私はお母さまからお金をいただき、百円紙幣を一枚ずつ美濃紙みのがみに包んで、それぞれの包みに、おわび、と書いた。
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
○半紙だか美濃紙みのがみだか、また西の内だか何だか知らぬが、とにかくこうぞの樹皮から製した日本紙を張った障子の美は、もう久しい前から
仮寐の夢 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
彼らは障子を張る美濃紙みのがみを買うのにさえ気兼きがねをしやしまいかと思われるほど、小六から見ると、消極的な暮し方をしていた。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かう云ひながら宇津木うつぎはゆつくり起きて、机にもたれたが、宿墨しゆくぼくに筆をひたして、有り合せた美濃紙みのがみ二枚に、一字の書損しよそんもなく腹藁ふくかうの文章を書いた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
凧にも随分大きなものがあって、阿波の撫養むや町の凧は、美濃紙みのがみ千五百枚、岡崎の「わんわん」という凧も、同じく千五百枚を張るのであるという。
凧の話 (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
お母様から小切こぎれを頂いて頭の丸いお人形を作ったり、お母様が美濃紙みのがみにお写しになった下絵をくり返しくり返し見たりして余念もなく遊ぶのでした。
押絵の奇蹟 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
うつむいていると、美濃紙みのがみうすく白いので、窓の外の雲の姿や桐の梢のむらさきの花の色までみて写りそうであった。
魚の序文 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
美濃紙みのがみ一枚に、学校のお清書の如く「公徳を重んぜよ」と大書して、夜になってその切取工事をしている所へ、四隅に重石おもしをして拡げて置いたものである。
青バスの女 (新字新仮名) / 辰野九紫(著)
そして帳場机の中から、美濃紙みのがみ細々こまごまと活字を刷った書類を出して、それに広岡仁右衛門にんえもんという彼れの名と生れ故郷とを記入して、よく読んでから判を押せといって二通つき出した。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
美濃国みののくにといえば、誰もすぐ「美濃紙みのがみ」を想い起すでありましょう。武儀むぎ郡の下牧しもまきから洞戸ほらどに至る板取いたどり川の川辺に、数限りなく和紙をく村々を見ることが出来ます。材料は主にこうぞであります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
信祝は、燭台の方へ向くと、大判美濃紙みのがみを薄くつづった書類を眺めて
大岡越前の独立 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
吹くとき一つ變な癖があつた。それは、矢の羽根——美濃紙みのがみを卷いて、末廣の袋なりにとがつた方を、口で一寸喰ひ千切る癖があつたでせう
彼等かれら障子しやうじ美濃紙みのがみふのにさへ氣兼きがねをしやしまいかとおもはれるほど小六ころくからると、消極的せうきよくてきくらかたをしてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
横浜という所には似もつかぬような古風な外構そとがまえで、美濃紙みのがみのくすぶり返った置き行燈あんどんには太い筆つきで相模屋さがみやと書いてあった。葉子はなんとなくその行燈に興味をひかれてしまっていた。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
吹くとき一つ変な癖があった。それは、矢の羽根——美濃紙みのがみを巻いて、末広の袋なりにとがった方を、口で一寸ちょっと喰い千切る癖があったでしょう
美濃紙みのがみの薄きに過ぎて、重苦しとみどりいとう柔らかき茶に、日ごとにおか緑青ろくしょうを交ぜた葉の上には、鯉のおどった、春の名残が、吹けば飛ぶ、置けば崩れぬたまとなって転がっている。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「縄付と一緒に番所へ持って行ったよ。油で痛めた古竹のしんへ、美濃紙みのがみの羽根を巻いた凄いやつさ」
彼は床の間の上にある別の本箱の中から、美濃紙みのがみ版の浅黄あさぎの表紙をした古い本を一、二冊取り出した。そうしてあたかも健三を『江戸名所図絵』の名さえ聞いた事のない男のように取扱った。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
忙しい中ながら、手文庫の掛けひもの上に、一寸幅ほどに断った美濃紙みのがみを巻いて、主人丹之丞と石田清左衛門が封印をし、そのまま、人知れず清左衛門の長屋へ持って来て保管して置いたのです。
美濃紙みのがみを卷いた羽を染めたのは、斑々はん/\たる血潮です。
美濃紙みのがみを巻いた羽を染めたのは、斑々はんはんたる血潮です。