まとま)” の例文
「へエ、百姓ぢやなし、商人ぢや無し、まとまつた仕事はありません、精々使ひはしりと小用位のもので、あんまり呑氣で勿體ないですよ」
曲げられない旧弊きゅうへいの家憲や、困難な事情も、どちらも可愛いい一人娘と、息子の為にと、曲げさせた上、やっとまとまった両家の縁組なのだった。
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それに又少し足して、十両二十両とまとまった金が出来たから、支度をして相当の処へ縁付けたいと思って居るのじゃ
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
この三つの方法は、いずれを前にし、何れを後にするという順序はない。最も理想的なことは、この三つの方法が相交錯してまとまった効果をあげることである。
文章を作る人々の根本用意 (新字新仮名) / 小川未明(著)
老人の話は茫漠として取止めのない断片であって、統一した筋もなくまとまりもなかったが、それには全体として現実をとびはなれた奇妙な美しさが匂っていた。
麦藁帽子 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
それで相談がまとまツて、由三は殆ど蟆口の底をはたいて昔の女の肖像畫を購取ツた。そして古新聞で畫面を包むで貰ツて、それをブラ下げながらテク/\あるき出した。
昔の女 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
富岡は立停つて、まとまりのない小さい声で、「君は神経衰弱なンだよ」と云つた。さうしてまた早口に
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
「銀塊があんなに沢山来るものですか。ありゃロシアへズーニェル・チェンモが法王の使節として行かれて、事がまとまったのでくれたのです。」「その品は何ですか。」
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
その代りに、いま売りに出している別荘が売れたら、少しはまとまった金を分けてやるような約束をしておいたらしいのです。ところが漸っとその別荘が売れた。五年前のことです。
朴の咲く頃 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
いて試みてみることがあっても、考がまとまらない。本を読んでも二ページも続けて読む気になれない。二人の恋の温かさを見るたびに、胸をもやして、罪もない細君に当り散らして酒を飲んだ。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
バラバラの五体が一つにまとまって行くのだ。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
阿波屋の家は小さいが、よくまとまつた、贅澤な家でした。格子づくりのしもたやで、深々と暮して居るのは、金貸といふ商賣のせゐでせう。
そこで三千円という大金を此の苦しい中へ持って来て、まとまった大金が入るというのは実に妙だ、それもまあだ君にお徳が有るのさ、ぐ其の内を百金御返金を願う
しかるにお房は、彼の財布さいふにはそこが無いものと思ツて、追續おツつぎ/\/\預算以外の支出を要求して、米屋八百屋の借をはらはせたり、家賃やちんの滯をめさせたり、まとまツて幾らといふ烏金からすがねくちまで拂はせた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
そして、こっちの身がらは、一切承知だし、株の値段も、最初は百二十両を希望していたのを、弁政夫婦が、こぎつけて、まとまったら、七十五両に負けようとまで、内談はできているのだった。
(新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、ヒヨロヒヨロのペコペコで、一向まとまりが付きさうもなく、主人の命を狙つたり、五萬五千兩に眼をつける、大伴黒主おほとものくろぬしとも見られません。
未だまとまりのつかぬ道連の小平と盲人めくらのおかめ母子おやこの事などは、鹽原多助後日譚ごにちのものがたりとして、お追々お聞きに達しますことゝ致しまして、一先ひとまず此処で打切りに致します。
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
いつか豆菊の澄んだ心のなかにまとまって分っていた。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、近頃は世の不景氣と共にそれさへ不如意ふによいになり、到頭五左衞門の望むまま、お秋を奉公に出して、少しばかりまとまつた金を貰ひ、それで
先方さきでも子供がほしいと思ってるところなんでございますから、相談は直ぐにまとまりまして、お米は越佐の養女に貰われ、夫婦も大層喜び、乳母をかゝえるなど大騒ぎでございます。
チラと見たところは、小鳥のやうに輕捷で、小鳥のやうに可愛らしいとは思ひましたが、淺黒い顏と、紅い唇の外にはまとまつた印象もありません。
三年前から養子の山之助に店を讓つて、こゝの奧の隱宅に引つ込んだ山右衞門は、無用心さを考へて手許に十兩とまとまつた金を置かなかつたのです。
商賣はどうだ、——風雅の藥には何が良い——花見の相談はないか——と言つたまとまりのつかない事を訊いて、平次にうながされるやうに外へ出ました。
銭形平次捕物控:167 毒酒 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
宗太郎の言ふのは、何となくまとまりがありませんが、それでも愚痴つぽい繰言の中にも、次第に筋道が立つて來ます。
五兩や十兩の金と違つて、百兩とまとまつては、家財道具を賣つても三十八所借をしても追ひ付かなかつたのです。
「そんなに溜め込む奴があるから、こちとらには、正月だといふのに、一貫とまとまつた小遣ひが入らない」
「盜りたいにも、その男は一兩とまとまつた金を持つたことのねえ人間だよ。お前のやうな玄人くろうとが狙ふやうな玉ぢやねえ。見當はその懷ろにある泥だらけな手紙だらう」
どう工面しても三百兩とはまとまらなかつたので、兄には濟まないと思ひましたが、朝の忙しいところを狙つて、そつと藏の中に忍び込み、違つた鍵と釘で大骨折で金箱を開け
二た月ほど前から虱潰しらみつぶしに泉屋一家を荒して歩く曲者、——どんなに要心を重ねても、風の如く潜り込んで、かなりまとまつた金をさらつた上、さへぎる者があると、恐ろしい早業で
何んかの手蔓てづるで田原屋から千とまとまつた大金を融通ゆうづうしてもらひ、それで漸く家業は立ち直つたが、その恩があるから、田原屋の言ふことなら、どんな無理なことでもいやとは言へない
小ばくちと女で身を持ち崩して居る鐵の懷中に十兩とまとまつた大金があるわけはなし。
銭形平次捕物控:167 毒酒 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
多の市の非道と吝嗇りんしよくは年と共につのるばかり、到頭吉三郎とお濱の仲まで割いて、千兩の金がまとまつたのを機會に、いよ/\この月のうちには、京都へ上ることに決めてしまつたのでした。
まとまり相もない縁談でしたが、無理に割けば、相對死もやり兼ねまじき若い者の情熱に引摺られたのと、娘可愛さの與次郎の必死の運動が效を奏して、近頃になつて玉屋も漸くその氣になり
「あの、遠縁の者が、養子になることに話はまとまりかけてをりますが」
「上總屋に金があればこそ、親類も知合もあの通り肩を入れてくれますが、何んにもないと判つたら、どうなることで御座いませう。それに折角まとまりかけた縁談も、お氣の毒なことに駄目になります」
「幸ひ、五兩とまとまつた金に、めぐり逢つたためしもあるめえ」
富崎佐太郎が、金森家へ返した金がいくらか、確かな事が知り度いんだ。浪人物の工面なら多寡たくわが知れてゐるが、若し三千兩とまとまつてゐたら、すぐ飛んで來てくれ。——佐太郎自身で持つて行つたか、使の者を