まつは)” の例文
斷り切れずいふがまゝにしたが、扨てこの後で釵には、坊主が口中の惡臭がまつはりついてしまつたので、紫玉は瀧壺に投捨てた。
あはれ其時そのとき婦人をんなが、ひきまつはられたのも、さるかれたのも、蝙蝠かうもりはれたのも、夜中よなか𩳦魅魍魎ちみまうりやうおそはれたのも、思出おもひだして、わし犇々ひし/\むねあたつた
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
磯村は彼女の大胆さ、といふよりも、恥知らずにあきれたけれど、何うしようと云ふ気も起らなかつた。そして磯村のむくいが皮肉に彼にまつはつて来たのであつた。
花が咲く (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
それからまた何んといふこと無く川面かはづらを覗込むだ。流は橋架はしげたに激して素絹のまつはツたやうに泡立ツてゐる。其處にも日光が射して薄ツすりと金色こんじきの光がちらついてゐた。清冽せいれつな流であツた。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
三田は此の人にまつは忌々いま/\しい噂を打消したやうなすつきりした氣持でオールを取あげると、折柄さしかゝつた橋の下を、双腕に力をこめて漕いで過ぎた。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
てよ、うまで、こゝろかるゝのは、よも尋常たゞごとではるまい。つたぬまなかへは古城こじやう天守てんしゆさかさま宿やどる……祖先そせんじゆつために、あやしき最後さいごげたをんなが、子孫しそんまつは因縁事いんねんごとか。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)